【韓国紙】大統領候補は“人口災難”の公約を 予想より8年早い減少


韓国紙セゲイルボ

11月25日、ソウルで、外国メディアと記者会見する韓国与党「共に民主党」大統領候補の李在明氏(時事)

 崔在天(チェジェチョン)梨花女子大客員教授が最近、「韓国の少子化現象は進化生物学者の立場で見れば極めて当然だ」と述べ話題になった。周辺に食物がなく、隠れる場所がなければ繁殖する動物は進化過程で生き残るのが難しいという説明だ。

 子供を持たない夫婦に聞くと、「生まれる子供に申し訳なくて…」と言う。歴代政権は少子化を克服するといって、06年から昨年まで225兆ウォンを投入したが状況は悪化するだけだった。文在寅(ムンジェイン)政権は“不動産・雇用惨事”で若者たちをさらに深い絶望に突き落とした。就職難が深刻で住宅価格は天井知らずなのに、誰が結婚し子供を産むというのか。

 統計庁の「2020~70年将来人口推計」の各種人口指標は衝撃的だ。韓国の総人口は予想より8年も早く今年から減少に転じた。50年に4736万人、70年には3766万人まで減少する。現在の生産年齢人口(15~64歳)は3738万人だが50年後には1737万人へと急減するという最悪のシナリオには背筋が寒くなる。

 問題は高齢化の速度が他国に比べ非常に速いという点だ。昨年のわが国の生産年齢人口の割合は72・1%で経済協力開発機構(OECD)で最も高かったが、70年には46・1%まで急落し、65歳以上の高齢人口の割合は46・4%になってOECD1位となる。人口の半分が老人という話だ。社会の活力が落ちて成長は鈍るだろう。

 さらに深刻なのはコロナ禍による結婚減少が続けば、合計特殊出生率が25年には0・52人まで下がることだ。これは戦争や経済危機など国家的災難の時に出てくる数値だ。

 “人口災難”は国家存続に直結する問題だ。外国の人口学者たちはかつて韓国が少子化で消滅する最初の国になるだろうと警告した。人口減少は国家競争力の弱体化はもちろん、教育や福祉、住宅など全分野にわたる対応が必要だ。直ちに国民年金の枯渇時期が早まるだろう。労働人口は減るのに年金受給者は増えるためだ。国会予算政策処は国民年金の赤字発生時期を2040年、枯渇時期を54年と推算した。

 年金改革を放置すれば未来世代の負担が大きくなるほかない。だが、文在寅政権は国民年金改革に目を向けない。大統領候補の李在明(イジェミョン)(共に民主党)氏と尹錫悦(ユンソンニョル)(国民の力)氏も年金改革には口を閉じている。票が減ることを恐れているからだ。与野党は少子化関連公約を出してはいるが、その程度で出産率の下落傾向を止めるには全く足らない。

 大統領候補は人口問題に対して具体的で積極的な公約を用意しなければならない。少子高齢化の解決法をめぐって激しく討論し、有権者の審判を受けるべきだ。

(蔡禧昌(チェヒチャン)首席論説委員、12月14日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

【ポイント解説】驚く少子高齢化のスピード

日本社会の少子高齢化が問題となって久しいが、お隣韓国がこれに追いついてきたと思ったら、日本を抜き去った。記事では合計特殊出生率が2025年に0・52人になると予想している。日本は19年が1・36、20年が1・34と漸減しているものの、かろうじて1人を維持しているが、韓国は既に19年には0・92となっていたのだ。
 極端な学歴社会、就職難(青年の失業率が40%)、不動産の高騰で到底一戸建てやマンションは手に入らず、これでは結婚して子供を産むこともできない。「巣を作れない動物は繁殖ができない」という自然界の掟を引用した梨花女子大教授の言葉は正しいのだ。

 30歳前の1人世帯が約40%になるという。非婚に加え、運よく結婚できてもDINKs(子供をつくらない共働き夫婦)が増えている。このままでは「少子化で最初に消滅する国になる」というのも冗談として笑い飛ばせるものではない。

 少子化対策は火急の課題だが、現政権も、次期大統領を目指す候補者たちからも聞こえてこない。うっかり公約でもしようものなら、文政権と同じ轍を踏みそうだからだ。つまり、何の解決策も示せないか、示したところで空理空論に終わりそうなのだ。

 高齢化の進展も深刻だ。国民年金の破綻が目に見えてきている。生産年齢人口の減少は年金だけでなく、一気にさまざまな社会制度を崩していくだろう。

 若者は就職難の国内を嫌って海外に職を求める。ボイコットジャパンも何のその、日本企業の説明会に学生が殺到する。誰も彼らを「土着倭寇」とか「親日派」とは罵(ののし)らない。切実な問題なのだ。米国や豪州への留学、移民も続くだろう。

 日本とて“対岸の火事”と見物しているわけにはいかない。程度やスピードの違いはあれ、まったく同じ課題を抱えているからだ。協力できる面があれば、共に対策を考えて行くべきである。一方がバランスを崩せば、他方が必ずその影響を受けるからだ。

(岩崎 哲)