【韓国紙】北が主張「南のSLBMは初歩的レベル」


韓国紙セゲイルボ

韓国の開発成功を過小評価

15日、北朝鮮の「鉄道機動ミサイル連隊」によるミサイル発射訓練=朝鮮中央通信提供(AFP時事)

15日、北朝鮮の「鉄道機動ミサイル連隊」によるミサイル発射訓練=朝鮮中央通信提供(AFP時事)

 南北の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)競争が激しくなる中、北朝鮮が韓国軍のSLBMに対して、「戦略戦術的価値のある兵器、脅威的な手段と受け止める段階ではない」と牽制(けんせい)した。

 21日、統一部(部は省に相当)などによれば、北朝鮮の張昌河(チャンチャンハ)国防科学院長は朝鮮中央通信への寄稿で、「今回、南朝鮮(韓国)が公開し大々的に広報したミサイルは水中発射弾道ミサイルだとすると、初歩的な第一歩のレベルにすぎないと評価する」と主張した。

 国防科学院は北朝鮮でミサイルなど新型兵器開発を主導する機関で、今月11~12日、新型長距離巡航ミサイルの試験発射も主管した。

 張院長は、韓国軍が今月15日発射したミサイルは「SLBMでない」という論理を展開した。彼は、「典型的な地対地戦術弾道ミサイルの構造・形態だ」として、「意図的な写真の加工処理がなかったとすれば、明らかに写真のミサイルは水中兵器とは程遠い、形も整っていない、どこか不細工な兵器」だと語った。

 張院長は、「この疑問のミサイルは南朝鮮軍がすでに保有する短距離地対地弾道ミサイル『玄武』系列のミサイルに見える」と言及した。実際「玄武4―4」とされる韓国軍のSLBMは地対地弾道ミサイル「玄武2B」を潜水艦発射の対地ミサイルに改良して開発したものだ。

 この他に彼は、国軍の今回のSLBM試験発射の映像を根拠に「水から出た後、エンジンが点火される時まで姿勢が傾いておらず、水柱と水の付着量が小さいことをみれば、水深が非常に浅いところから発射した」もので、「(潜水艦の)作戦機動中の発射でなく、停止状態、または微速機動時に発射したもの」だと指摘した。

 「玄武4―4」の飛行距離や弾頭重量など具体的な仕様は公開されていないが、専門家は「玄武2B」の飛行距離が500㌔㍍、弾頭重量が1㌧程度と言われていることから、「玄武4―4」もこれと類似したものと見ている。

 北朝鮮は、2015年5月にSLBMである「北極星1型」を初めて試験発射し、19年10月には「北極星3型」を試験発射した。その後、昨年10月と今年1月の閲兵式で新型SLBMと推定される「北極星4シウッ」と「5シウッ」を公開したが、これらが試験発射されたかどうかは確認されていない。

 梁茂進(ヤンムジン)北朝鮮大学院大教授は、「南北がSLBMの開発競争を行う状況で、韓国が先に成功したことが分かり、北朝鮮が評価を引き下げようとしたのだろう」とし、「また、文在寅大統領の国連訪問時を狙ってSLBMを含む自分たちの兵器開発を正当化する意図もあると思われる」と分析した。

(キム・ボムス記者、9月22日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

米の気を引くミサイル発射

 北朝鮮が立て続けにミサイル発射実験を行った。これは国連安保理決議に違反するもので、北が喉から手が出るほど求めている経済制裁の解除とは真逆の行動である。それに、しばらく途絶えていた発射が国連総会直前というタイミングで強行されたことに、各国はその意図を読みかねている。

 この際、単純に考えればいい。北朝鮮の行動パターンは「関心を引くこと」だ。国際社会から落伍し無視されている状況が我慢ならないのだ。特に新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)で制裁をかいくぐった物資の調達もままならなくなっている。世界は自国のことで手一杯か、大国は対中国戦略で手が離せない。他国など構っていられないのだ。

 この状況で、世界で8カ国しか持っていない潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の実験を行って、「国連決議違反だ」「東アジアの脅威だ」と韓国や日本が騒ぎ、米国もしぶしぶ相手をするといういつものパターンに持ち込みたい、というのが北の意図だと思われる。だが、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領ですら、何事もなかったかのように触れないことで、北の意図は空振りしたと見られる。

 それよりも、韓国が「7番目」と発表し、それに対して北朝鮮が「7番目は自分だ」と抗議しないことが不思議だ。順位はこの民族にとって生き死にの問題なのに、上位番を譲るとは。北朝鮮は「初期段階」とか「脅威ではない」と見下し、さらに「SLBMではない」と結論付けることで、自尊心を保ったことにしたのだろう。

 ところで、韓国がSLBMを持つ意味が分からない。既に米軍のミサイルが韓国全域をカバーしているというのに、遠隔の適地に密航して潜水艦から撃つミサイルはどこを攻撃対象としているのかが気になる。

(岩崎 哲)