李在明は有力な次期大統領候補なのか


韓国紙セゲイルボ

親文派に拒否感、第3候補も

 李在明(イジェミョン)京畿道知事は最近、韓国の政治で最も論争的な人物だ。李知事の支持者たちは彼が率直な論理展開と推進力、議題を先取りする政治センスがあるとして“サイダー(のようにスカッとする)政治家”“戦闘型盧武鉉(ノムヒョン)”というニックネームを付けた。

韓国京畿道知事の李在明氏=2018年6月、京畿道水原市(EPA時事)

韓国京畿道知事の李在明氏=2018年6月、京畿道水原市(EPA時事)

 半面、保守層では大衆迎合のポピュリスト、狷介、過激で急進的な政治家と批判する。“韓国のチャベス(前ベネズエラ大統領)”と呼ぶほどの警戒対象だ。

 彼に対する評価は好き嫌いによりこのように極端に二分化される。彼が李洛淵(イナギョン)共に民主党代表、尹錫悅(ユンソンヨル)検察総長(検事総長)など競争者らとの差を広げて次期大統領候補支持率1位に上った。

 彼は今年に入って実施された大部分の世論調査で最も高い支持率を記録している。1日に発表されたセゲイルボとリサーチ&リサーチの調査では32・5%を記録。次期大統領候補の世論調査で30%を超えたのは今回が初めてだ。

 李知事の支持率上昇で最も注目する点は湖南(全羅道地域)の支持率で同地出身の李洛淵代表を追い抜いた点だ。地域主義政治工学の観点から見れば、彼は民主党の“嶺南(慶尚道地域)候補”である。

 “87年体制”(1987年の民主化)後に選出された7人の大統領のうち、湖南出身は金大中(キムデジュン)(DJ)が唯一で、あとはすべて嶺南出身だ。傑出した政治家のDJも嶺南では苦戦した。97年大統領選挙でDJの嶺南得票率は10%を若干上回った程度だった。慶尚北道安東出身の李知事は嶺南票を引き上げられる点で、民主党には魅力的なカードとなり得る。

 李知事の最大の課題は与党“最大株主”である親文(文在寅支持派)陣営の“拒否情緒”の克服だ。2017年の大統領候補選出選挙、18年京畿道知事候補選出選挙で、親文勢力と激しく対立した後遺症が解消されていない。

 李知事の浮上で、親文勢力が分裂の様相を見せている点は彼にとって希望的だ。親文派のうち一部は李知事に回ったという分析もある。

 しかし、鉄板の親文派は公然と“第3の候補”に言及するなど、李知事への拒否感は強い。最近出ている“13龍登板論”はこうした情緒の表れで、与党の潜龍(隠れた人材)を全部リングに上げて、候補選出選挙枠を最大限大きくしようという構想だ。

 これは親文本流が選挙レースが李知事中心になるのを嫌い、第3の候補を浮上させるために出てきた。親盧(武鉉)元老が“586世代(80年代に学生運動を主導した50代)の登場”を予告したのと、代表的な586世代である任鍾晳(イムジョンソク)元大統領秘書室長が李知事を直撃するのも同じ脈絡と読める。

 李知事がまだ独走体制を固めていないと見る親文本流は執拗(しつよう)に“第3候補”を物色するだろう。与党の次期大統領候補の競争構図は“李在明か、第3の候補か”に再編されつつある。

(パク・チャンオク論説委員、2月11日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

与党主流派に挑む「韓国のトランプ」

 文在寅大統領の任期もあと1年余りとなり、政局は一気に後継候補選びの話題が中心になってきた。5年1期と制限のある韓国の大統領は「5年ごとに挿げ替えられ」その後「罰せられる」リスキーな職業と言われている。そのリスク軽減策は同じ派閥から後継者を出すことだ。しかし、野党だけでなく与党内でまず激しい競争を潜り抜けねばならない。

 李在明京畿道知事の印象は「喧嘩師」である。少年工として働きながら中高を卒業資格検定試験で突破し、大学院卒業、司法試験に合格、弁護士となる。城南市長などを経て、2017年の大統領選の時、党内予備選で文在寅氏と争った。

 常に何かと闘っている。「韓国のトランプ」という異名は若干、民主派弁護士の前歴とはイメージが合わないが、与党内の立ち位置は常に親文派(主流派)への挑戦だ。直情径行の面があり、野党からは「頭に思い浮かんだことを何も考えずにやる」と冷笑を浴びせられることも。しかし慶尚道出身でありながら、全羅道でも支持が高く、これは与党内で無視できないアドバンテージとなる。

 日本に対しては慰安婦、徴用工ともに厳しい発言が多く「対日強硬派」と受け取られている。日本メディアに「韓日は密接な関係で無視できない」と述べるが、これは「だから韓国の言い分を聞け」ということで、その意味で韓国政治家の標準的考え方である。

 与党主流派は「対在明」の二者対決になることを避けたい。そのため「第3の候補」を立てて乱戦、混戦に持ち込み、比較多数を抑えようとの戦法だ。ちゃっかり「ザ・運動圏」の任鍾晳氏を紛れ込まそうとしているのは要警戒だが。

 反主流派の喧嘩師を軸に与党内候補選びが推移するとの見立てだが、あと1年の間には何が起こるか、どう情勢が変わるか分からない。

(岩崎 哲)