北朝鮮党大会 強硬路線で問題は解決しない


 北朝鮮で約5年ぶりとなる朝鮮労働党大会が開かれ、金正恩氏は核武装路線の継続を強調し、米国や韓国に対する強硬姿勢を鮮明にさせた。だが、北朝鮮が周辺国を揺さぶっても国際社会による対北経済制裁を緩和させる保証があるわけではない。今後の国政運営も厳しい舵取りを迫られそうだ。

 核強調し国内引き締め

 北朝鮮は昨年、制裁や新型コロナウイルス禍に伴う中国との国境封鎖、台風など水害による農作物被害のいわゆる「経済三重苦」に見舞われた。正恩氏もそのことに言及し、経済計画が著しく未達成に終わったとして失政を認めた。

 党大会ではこうした経済難に対する住民の不満を収める必要があっただろう。まずは住民の苦しい事情に寄り添う指導者像をアピールし、民心離れに歯止めを掛けたかったようだ。

 その上で正恩氏は「核戦争抑止力」の強化を訴え、報告の中で「核」という単語を多用した。住民は核保有こそ米国の侵略を防ぎ、自分たちの平和な暮らしと安全を担保するものと教えられてきた。そのことを喚起させ、難局を乗り切るため引き締めを図ったとみられる。

 だが、こうしたやり方は住民の目をそらすことはできても、経済難克服には役立つまい。あくまでも独裁体制維持を最優先し、住民に犠牲を強いる構図に変わりはない。

 正恩氏はかつて祖父や父がつけていた「党総書記」という肩書を復活させ、自らの権威付けも図った。だが、これも国内宣伝用であって経済とは無縁だ。

 正恩氏は「最大の主敵である米国を制圧し屈服させる」と述べ、バイデン次期米政権に強硬姿勢を示した。米国を圧迫する手段として、核を搭載した多弾頭の長距離弾道ミサイルや極超音速機、原子力潜水艦の開発などにも言及した。米国の防空網が無力化される可能性に警戒感が高まっている。党大会を記念して行われた軍事パレードでは新型ミサイルも公開された。

 しかし、バイデン氏が北朝鮮の揺さぶりに動じ、すぐさま対話に応じるかは不透明だ。外交・安全保障の布陣が固まるまで時間がかかり、対北政策の立案はそれからとの見方もある。制裁長期化で米国から緩和を一刻でも早く引き出したい北朝鮮の方が不利な立場だ。

 新兵器を振りかざして武力挑発を再開させようものなら、さらなる制裁強化を招くのは必至だ。正恩氏としてはジレンマに陥るしかない。内外に示した強硬路線だけでは根本的に問題を解決するのは難しい。

 党大会には中国の習近平国家主席が祝電を寄せ、中朝両国の関係発展は「党・政府の確固不動な方針」と述べた。今後も北朝鮮への経済支援を続ける考えを示唆したものだ。正恩氏は中国の力に頼り、当面の経済難を乗り切るつもりかもしれない。

 拉致解決へ努力怠るな

 党大会では日本への言及はなく、対日政策の優先順位が低いことをうかがわせた。だが、日本としては拉致問題が解決に向け進展していない状況を看過するわけにはいかない。あらゆる手段を講じ、解決の糸口をつかむ努力は怠れない。