コロナ起源で専門家対立 70%は研究所流出を支持

ビル・ガーツ氏

ビル・ガーツ氏

 新型コロナウイルスの発生源を突き止めようと米政府機関が協力して立ち上げた科学者と医療専門家らで作るタスクフォース内で意見が対立、政権交代を間近に控え、結論を公表するかどうかをめぐる議論が暗礁に乗り上げている。

 このタスクフォースの内部対立に詳しい筋の話によると、メンバーの専門家らの70%は、ウイルスは中国湖北省の武漢ウイルス研究所にある医療研究施設からミスによって流出したと判断し、発表すべきだと考えている。

 3週間にわたって秘密協議がタスクフォースで実施されてきた。

 問題は、米政府が公式に、中国を新型コロナの発生源に指定し、中国政府に責任を取らせるかどうかだ。中国は、感染拡大への対応や隠蔽(いんぺい)に対する批判を逸らそうと世界的な宣伝戦を実施してきた。

 タスクフォース内の意見の対立は、超党派で取り組むべき国家安全保障にかかわる重要な課題と考えられているにもかかわらず、問題が政治化されていることを反映している。

 研究所からの流出という主張に反対しているメンバーらは、コウモリから中間宿主を経て人間に自然に感染したと主張する。タスクフォース内の約15%に当たる。

 ほかに、ウイルスは生物兵器として中国軍がつくったと主張するメンバーもおり、情報機関、武器管理機関がこの主張を支持している。約7%に当たる。

 この主張は、米国に亡命した中国のウイルス学者、閻麗夢氏が最初に明らかにしたもの。閻氏は、新型コロナが中国の研究所でつくられたことは間違いないと主張、それを裏付けるさまざまな論文を公表している。

 残る8%は態度を明確にしていない。

 タスクフォースの中には反トランプ派の専門家や科学者らが数多くいるという。

 内部対立によって、1月20日のトランプ氏の退任前に公表されないのではないかとの見方が強まっている。そうなれば、中国に対して融和的なバイデン次期政権は、報告を公表せず、もみ消してしまう可能性がある。

 情報筋によると、中国当局は、ウイルスの発生源をめぐる調査を妨害し続けており、次期政権が調査をやめることを期待している。

 新型コロナが生物兵器であったとすれば、国家安全保障にとって重大な意味を持つが、連邦政府はその判断ができず、発生源も、実行犯も特定できなかったことになる。

 この情報筋は、米政府が生物兵器のタイプと発生源を突き止めるために必要な情報活動の態勢を整えておらず、将来の生物兵器攻撃に対して脆弱(ぜいじゃく)であることを露呈した可能性があると、政府の対応能力に懸念を表明した。


ビル・ガーツ氏
米紙ワシントン・タイムズ(WT)の国防担当記者として、これまでにスクープ記事を多数執筆。2019年11月まで米保守系ニュースサイト、ワシントン・フリー・ビーコンの上級エディター。著書に『Deceiving the Sky(空を欺く)-地球的覇権狙う共産中国、活動の内幕』(Encounter Books)、『誰がテポドン開発を許したか』(文藝春秋社刊)など