“バイデン時代”に直面する韓国の課題


韓国紙セゲイルボ

政策空白期に半島状況管理を

 米国にジョー・バイデン時代が開かれた。ドナルド・トランプ大統領が選挙結果を受け入れていないが、トランプがこれほど奮戦したことも印象的だ。7000万人を超える有権者たちの票を得て得票率が48%に近接した。

6日、米東部デラウェア州ウィルミントンで演説する民主党のバイデン前副大統領(AFP時事)

6日、米東部デラウェア州ウィルミントンで演説する民主党のバイデン前副大統領(AFP時事)

 今はバイデンの時間だ。彼は勝利の演説で「統合を求める大統領になる」と言った。「私は米国が全世界の灯だと信じる」として、「米国が再び世界から尊敬されるようにする」とも述べた。自由主義と寛容に基づいた民主主義と国の品格を復元するという意味だ。

 韓国にとってはこれからが問題だ。バイデン時代の米国の対外政策を予想して対策をたてなければならない。バイデンは上院外交委員長を務めた外交安保専門家だ。バラク・オバマ前大統領が彼を副大統領としたのもこの能力を高く評価したためだ。外交門外漢のトランプとは違う。

 バイデンはトランプの対外政策の根幹だった米国優先主義を廃棄して多者主義に復帰するだろう。大統領選挙開票過程で勝機を捉えるとすぐに、「就任初日パリ協定に復帰する」と語った。米国の対外政策がトランプ時代の即興性から抜け出し予測可能な方向に変わっていくことを予告したものだ。

 韓国政府は韓米同盟関係を強健にしていかなければならない。バイデンが同盟関係を重視するだけに在韓米軍防衛費分担金交渉などで以前のように無理な要求をしないだろう。米国が中国に対する牽制で韓国など同盟・友好国に参加を強力に要求する状況にも備えなければならない。

 米国の対北朝鮮政策は首脳会談などで大きな枠組みをつくっていくトランプ政府の“トップダウン”方式から抜け出し、実務交渉で着々と成果を積み上げる“ボトムアップ”方式に変わるだろう。北朝鮮の非核化に対する要求水準も高まるしかない。

 韓国政府が追求する韓半島平和プロセスは一大変化が避けられない。政策的融通性を発揮する余地が狭まるだろう。政府は米国との対北協調を強化しながら緻密に対北政策をたてなければならない。米国が朝米の直接交渉から韓国、中国などと共にする多者交渉に方向転換することに備えて、外交仲裁・調整の空間を広げていく必要がある。

 緊急の課題は来年1月新政府スタート前後の米国の政策空白期に、韓半島の周辺状況を管理していくことだ。バイデンが新外交安保ラインを構築し、政策の方向を設定するまでには数カ月の時間がかかる。北朝鮮はこうした不確実性を利用して新型ミサイル試験発射のような挑発によって韓半島の緊張を高めようとするかもしれない。米国に新政府ができるたびに対北朝鮮政策の樹立に影響を及ぼし、今後の朝米交渉を有利に導くために北朝鮮が使ってきた手法だ。

 韓国政府は北朝鮮が挑発によって形勢を揺さぶろうとする誘惑に陥ることを防がなければならない。米国の新政府はこうした動きに注目するだろう。韓国政府の対米・対北政策の意思と外交力量が試験台に上がる。

(朴完奎論説室長、11月10日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

正常位置に戻るか韓国外交

 韓国では保守と左派とを問わず、まだ結果の出ていない米大統領選で、民主党のバイデン候補勝利を前提に対策を議論している。トランプ大統領の巻き返しなど眼中にない。

 そこで主流の論議というのが、今までさんざん「米国第一主義」に振り回されてきたが、今後は多国間主義、同盟重視の従来路線に戻っていくという予測だ。トランプと金正恩の間隙を突いて立ち回る余地を得ていた文在寅政権が、どっしりと構えた公開の広場で、まともな外交要求に応えていけるのか、むしろトランプ時代よりも負担が大きくなるという見方が優勢だ。

 文政権が推し進めてきた対北融和政策や、中国に気兼ねしつつの米国との“同盟関係”が全部俎上(そじょう)に上がることになる。するといまの東アジアの居心地の悪さをもたらした文政権の対日政策も、対米関係の変化につれて軌道修正していかざるを得なくなるだろう。

 しかし、記事では「日本」への言及はない。日米韓の安保協力という“基本中の基本”は理屈で分かっていても、文政権であるうちはここに戻るのは難しい。強行すれば彼らのアイデンティティー崩壊につながる。

 米政権交代期に北朝鮮は決まったように挑発を行って注目を引こうとするが、仮にバイデン氏が大統領になったとして、彼が気安くシンガポールやハノイで会うという外交ショーは想像しにくい。体制保証と核保有国認定はいくら文政権の後押しがあっても遠い夢だ。

 確かに残り任期の少なくなった文政権の「力量」が問われてくる。

(岩崎 哲)