ウイグル族弾圧、改善なければ一層の圧力を
米政府内ではこのところ、中国の人権問題への発言と対応が目に付く。
中国のウイグル族弾圧を批判するポンペオ国務長官の発言はその一つだ。
米が弾圧根拠に対中制裁
ポンペオ氏は南部テネシー州ナッシュビルで行った講演の中で「中国共産党は100万人以上のウイグル族を強制収容し虐待している」と非難。市民の言葉や思考など全ての生活が全体主義に支配された社会を描き、いわば共産主義の欠点を正確に言い当てた英作家ジョージ・オーウェルの小説「1984年」が「現実になっている」と強調した。
1949年に刊行された「1984年」では、人々が息苦しい監視社会の中で暮らす様子を描き、架空の独裁者「ビッグ・ブラザー」が率いる国での歴史の改竄や電子技術を使った監視活動が描かれている。
中国政府は新疆ウイグル自治区の収容所で100万人のウイグル族に文化や信仰を放棄させるなど強制的な同化政策を取っている。一般のウイグル族も学校ではウイグル語を使えず、約1カ月間にわたって日の出から日没まで飲食が禁じられるイスラム教の宗教行事「ラマダン(断食月)」も許されない。街中には監視カメラを張り巡らせ、顔認識技術を使って個人の行動を追跡監視している。
信教の自由を保障し、少数民族の独自の文化を保護する民主主義国では到底考えられないことだ。こうした同化政策は民族浄化にもつながるものであり、見過ごすわけにはいかない。
中国の臓器移植では、収容所のウイグル族から強制的に摘出した臓器が使われている疑いも指摘されている。事実であれば、中国共産党の非人間性を表していると言えよう。
トランプ米政権はウイグル族弾圧を厳しく追及していく立場を明確にしている。米商務省は今月、弾圧に関わっているとして監視カメラ世界首位の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)など計28団体・企業に事実上の禁輸措置を科した。この中にはウイグル自治区の公安機関なども含まれる。
さらに米国務省は、弾圧に関与した中国政府当局者や中国共産党員に対し、米入国ビザ(査証)発給を制限すると発表。ポンペオ氏は「弾圧キャンペーンを直ちにやめ、拘束した人々を解放するよう中国に求める」と表明した。中国が弾圧をやめないのであれば、さらに圧力を掛ける必要がある。
ウイグル族への抑圧が強まっているのは、ウイグル自治区が、習近平中国国家主席の掲げるシルクロード経済圏構想「一帯一路」の要衝に当たることが背景にあるという。そうであれば、他国が一帯一路に協力することなどあってはなるまい。
習氏の訪日招請撤回を
習氏は来春、国賓として来日する。だが中国政府によるウイグル族弾圧に目をつぶって「日中関係改善」を演出すれば、日本は弾圧を容認していると受け取られても仕方がない。
安倍晋三首相は、中国の人権状況が改善されなければ習氏への訪日招請を撤回することも検討すべきだ。