太平洋地域で中国軍優位に
豪研究所 米戦略の見直し要求
オーストラリアのシドニー大学米研究センターは19日、太平洋地域で米国はすでに軍事的優位を失い、中国は米軍を容易に圧倒できる奇襲攻撃能力を備えていると警告する報告を発表した。報告は、中国が巨額の軍事予算を投じ、太平洋に新たな戦力を投入する一方で、米国で軍事予算が削減され、中東などでの戦争に戦力が投入されてきたことなどが要因だと主張、この地域での軍備増強と同盟関係の強化を求めた。
報告は「中東での戦争、緊縮財政、先進兵器への投資不足、リベラルな政策によって、米軍はインド太平洋地域での軍事的競争に対応できなくなった」と強調。中国の接近阻止・領域拒否(A2AD)能力によって「米国はインド太平洋地域への戦力投射が困難」になっており、「中国が限定的な軍事力で、米国の対応前に勝利を確立することができるようになる危険性が高まっている」と警鐘を鳴らしている。
その上で、南シナ海、東シナ海などで中国軍が攻撃を仕掛けた場合、「戦力、時間、距離、利害などあらゆる面で非対称であり、効果的な米国の対応は難しい」と分析。「現在のこの地域での米軍の体制では、米国と同盟国の大部分の基地、前方展開中の艦船、兵員、航空機は、中国軍の攻撃を抑制するよりも、攻撃を回避することに追われる」ため「危機の初期段階で米軍の行動は大幅に制約を受ける」と警告している。
エスパー米国防長官は今月に入って太平洋地域を訪問した際、南シナ海など中国が影響力を強めるいかなる場所でも「航行の自由」作戦を遂行すると中国の海洋進出への対抗の必要性を強調した。
これについて報告は、アフガニスタンとイラクでのほぼ20年にわたる戦争と国防予算の削減で米国の対応能力は弱まっていると指摘した。
その一方で、太平洋での軍事能力を強化し、地域内の主要同盟国との新たな軍事演習を開始し、協力関係を深めるなど、太平洋地域での戦略全体を見直す必要性を強調、中国が優位に立っているとされる極超音速兵器など、新型兵器を投入するよう求めている。
(ワシントン・タイムズ特約)