南シナ海、日米は共同訓練で関与強めよ


 中国軍が南シナ海で対艦弾道ミサイルの発射実験を実施したことが確認された。

 米政府は「南シナ海を軍事化しないという中国の約束に反する」として警戒を強めている。地域の安定に向け、日米が積極的に役割を果たすことが求められる。

中国がミサイル発射実験

 米NBCニュースなどの報道によると、複数の対艦弾道ミサイルが南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島近くの「人工構造物」から発射された。

 南シナ海をめぐっては、実効支配を急速に進める中国のほかにフィリピンなど複数の国が領有権を主張している。中国軍が領有権争いが続く海域に向けてミサイルの発射実験を行ったのは、今回が初めてだという。

 南シナ海は、中東からの原油を積んだタンカーなど各国の船舶が行き交うシーレーン(海上交通路)だ。原油を海外からの海上輸送に依存する日本にとって、南シナ海の安全は国家の存立にも関わる。中国の身勝手な振る舞いを放置することはできない。

 中国は2014年以降、人工島の造成や施設の建設などで南シナ海の軍事拠点化を進めている。オランダ・ハーグの仲裁裁判所は16年7月、人工島に排他的経済水域(EEZ)は生じないと判断し、実効支配を進める中国の主張を否定した。

 しかし、中国は判決を無視する態度に出ている。中国は南シナ海を台湾などと同じく安全保障上譲歩できない「核心的利益」と位置付けているが、本来であれば地域の安定に寄与すべき大国が、自ら秩序を破壊することは極めて無責任だ。

 米国は昨年、中国が南沙諸島に高性能の対艦ミサイルや地対空ミサイルを初配備したことを確認している。今回のミサイル発射で脅威が一段と高まることが懸念される。

 対艦弾道ミサイルは「空母キラー」と言われる。今回の発射実験には、地域紛争時に米国の介入を阻止する「接近阻止・領域拒否」(A2AD)戦略の展開能力を誇示し、米国を牽制(けんせい)する狙いもあろう。

 米国は国際法が許せばどこでも飛行、航行し、作戦を実施する「航行の自由」を尊重してきた。米軍は、中国が南シナ海で造成した人工島の12カイリ(約22㌔㍍)以内に米軍艦船を派遣する「航行の自由作戦」を展開してきた。今回の発射実験を契機に、この作戦の頻度を一層高めなければならない。

 日本も米国と共に南シナ海への関与を強める必要がある。海上自衛隊の護衛艦「いずも」は今年6月、米原子力空母「ロナルド・レーガン」と南シナ海で共同訓練を行った。中国による軍事拠点化に対処するため、日米両国は今後も南シナ海でこうした訓練を繰り返すことが求められる。

ASEANとの連携も

 東南アジア諸国連合(ASEAN)がバンコクで11日に開く国防相会議の共同宣言草案は、南シナ海情勢について「平和や安全、航行の自由の維持と促進の重要性」を強調している。

 日米はASEAN諸国とも連携し、中国を封じ込めていくべきだ。