習氏・北外相会談、うわべだけの非核化は不要だ
中国の習近平国家主席は訪中した北朝鮮の李容浩外相と会談し、双方が朝鮮半島の非核化実現の重要性を確認したという。中国は米国に対し一定の配慮を欠かせない立場から、また北朝鮮は来年初めにも開催が見込まれる2回目の米朝首脳会談に向け、それぞれが非核化に言及したものとみられる。だが、これまで何度も確認されたはずの非核化は一向に進展しておらず、果たして両国が本当に非核化を望んだ上での確認なのか疑問だと言わざるを得ない。
米朝会談前に関係強化
中国側の発表によると、習氏は米朝首脳会談などを念頭に「双方が歩み寄り互いの懸念に配慮することを望む」と述べた。一見すると中立的立場からの発言だが、非核化の速度を上げない北朝鮮を擁護する思惑もあるのではないか。
米国の懸念は北朝鮮が「完全かつ検証可能で不可逆的な(核)解体」(CVID)に向け核関連施設のリスト公表や査察受け入れに応じるのか、また北朝鮮の懸念は米国が対北制裁解除や朝鮮戦争(1950~53年)の終戦宣言に応じるのか、ということであろう。
6月の史上初の米朝首脳会談で大枠の合意がなされたにもかかわらず、その後、米朝対話が進展しなかった最も大きな原因は、北朝鮮の非核化意志が疑わしかったことに他ならない。
米メディアは、衛星写真の分析結果を基に北朝鮮が長距離ミサイル基地を新たに建設していると報じた。非核化どころか核・ミサイル開発の手を緩めていない可能性がある。
今回の中朝トップレベル会談は、2回目の米朝首脳会談開催や北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長のソウル訪問が取り沙汰される中で行われた。これまでも金委員長は北朝鮮に非核化を厳しく迫る米国との会談を前に訪中した。両国の緊密な関係をアピールし、中国は事実上、北朝鮮の「後ろ盾」の役割を果たしてきた。あたかも大一番前の作戦会議でもするかのような光景が繰り返されている。
11月の中間選挙を終え、トランプ米大統領にとって北朝鮮問題の優先順位は必ずしも高いとは言えないが、再選をかけた2年後の大統領選まで視野に入れた場合、北朝鮮が非核化プロセスを進めることを自らの外交実績と見なす可能性はある。政治的メリットを重視するトランプ氏の足元を見て、北朝鮮が見せ掛けの非核化でお茶を濁すのではないかとの懸念が先立つ。
今回の会談で中朝は、来年が国交樹立70年の節目に当たることから記念行事の開催などを通じ、さらなる関係強化を図ることで一致した。日本としては、中朝の協力関係がうわべだけの北朝鮮非核化を保証するものになっていかないか引き続き厳しい目を向け、中国には国際社会の一員として北に非核化を迫るよう求める必要があろう。
韓国は対話見直しを
中国と並び米朝対話を促し、その橋渡し役を自任する韓国・文在寅政権の対話前のめりの姿勢も問題だ。これまで北朝鮮に非核化を厳しく迫らず、見せ掛けの非核化を許してきたのではないか。いま一度、冷静になって見詰め直す時だ。