中国の外交方針、「グローバルな統治」に警戒を
中国共産党・政府の外交政策に関する最重要会議とされる「中央外事工作会議」が6月、4年ぶりに北京で開催された。
この中で習近平国家主席は、グローバルな統治体制を主導して中国中心の新たな国際秩序を構築すると宣言した。南シナ海で一方的な現状変更を進めるなど、国際ルールを軽視する中国の影響力拡大を警戒すべきだ。
新たな国際秩序目指す
この会議の目的は、中国の新たな外交方針や戦略を打ち出すことにある。これまで2006年と14年の2回しか開かれていない。
習氏は演説で、中国はグローバルな統治を刷新するための道を指導していかねばならないとし、全世界における影響力を増大するとも述べた。具体的には、中国主導のシルクロード経済圏構想「一帯一路」やアジアインフラ投資銀行(AIIB)をさらに発展させるなどして新しい国際秩序の構築を目指すとしている。
演説では「新時代の中国の特色ある社会主義外交思想」という言葉が使われた。中国が築こうとする国際秩序が、現在の米国主導のものと違うことは明らかだ。自由や民主主義、人権、法の支配などの価値観が守られるとは思えない。
習氏は、中国の主権や安全保障、発展利益を守るとも強調した。しかし、南シナ海の軍事拠点化など軍事力を背景とした一方的な現状変更は決して許されない。
中国が軍事力増強を着々と進めていることも気掛かりだ。中国の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風41」が近く実戦配備されるとの見方が強まっている。東風41は固体燃料を使い、最大で10発の弾頭を搭載可能と推定されている。このため、従来のICBMよりも迎撃が困難とされている。射程は1万2000㌔以上に達し、米国全域に届く。
また、中国は12年に就役した初の空母「遼寧」と今年5月に試験航海を行った国産空母を保有し、3隻目の空母も建造中だ。20~22年に三つの空母打撃群を整え、将来的には最大で六つになると分析する専門家もいる。米軍に対抗し、東シナ海や南シナ海、インド洋で軍事的圧力を高めていく狙いだろう。
中国は沖縄県・尖閣諸島の領有権を不当に主張し、中国公船が尖閣周辺で領海侵入を繰り返している。習氏が今回、「グローバルな統治」という外交方針を示したことで、中国の覇権主義的な動きが強まる恐れがある。日本は十分に警戒すべきだ。
米太平洋軍は5月、名称を「インド太平洋軍」に変更した。日米が中国に対抗する形で進める「自由で開かれたインド太平洋戦略」に沿った措置だ。この地域で中国の影響力が強まる中、米軍のプレゼンスは不可欠だ。
法の支配の価値観浸透を
日本も米国の同盟国として、防衛協力を一層強化する必要がある。インドやオーストラリアとも連携し、南シナ海やインド洋などでの合同演習で中国を牽制(けんせい)すべきだ。
中国の影響力を削(そ)ぐには、この地域で自由や民主主義、人権、法の支配などの価値観を浸透させていくことも求められる。