海の日、国益守る海洋政策を進めよ
きょうは海の日。四方を海に囲まれた日本は、有史以来、海の恩恵を受けてきた。海洋国家としての自覚を新たにし、今日の日本を取り巻く海の状況を直視していきたい。
「基本計画」で安保前面に
この5月、政府は今後5年間の海洋政策の指針となる「海洋基本計画」を閣議決定した。新しい基本計画の最大の特徴は、これまで資源開発などを柱としてきたのに対し、領海警備や離島防衛など安全保障を前面に打ち出したことだ。
背景には、海洋をめぐる環境が厳しさを増していることがある。具体的には、沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返す中国、日本海の好漁場「大和堆」で違法操業が目立つ北朝鮮の存在である。
南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)内に、世界の消費量の数百年分に相当する大量のレアアース(希土類)が存在することが明らかになった。その他にもわが国周辺海域には、多様な海底鉱物・エネルギー資源が眠っており、その開発に期待が掛けられている。
だが、それも海洋の安全保障と権益の保護が大前提である。実際、中国はこうした資源のある海域で、わが国の同意を得ずに海洋調査を行っている。
中国は今月、尖閣沖でわが国領海への侵入を繰り返す海警局の公船を準軍事組織の人民武装警察部隊(武警)に編入した。今後、挑発がエスカレートする恐れがある。
わが国の海洋主権を侵す行為には、断固たる姿勢で臨むべきである。第一線で警戒に当たる海上保安庁の警備体制をさらに充実させる必要がある。政府の総合海洋政策本部の本部長でもある安倍晋三首相は、同本部の会合で「四方を海に囲まれたわが国にとり海洋政策は死活的に重要だ。その成否はわが国の国益に直結する」と述べた。
もちろん海洋、特に公海はすべての国々と共有しており、とりわけ近隣諸国との協力は重要である。世界的に水産資源の減少が顕著になっている。北太平洋のサンマの漁獲規制は中国などの反対で導入が見送られた。
一方、深刻な海洋汚染をもたらしている廃棄プラスチックなど海洋ごみ問題では、日中韓3カ国の環境相会合で解決に向け連携していくことで合意した。利害を共有できる分野での協力は積極的に進めるべきである。
豊かで安全な海を次世代に引き継がせることが、われわれの責任である。海洋の安全保障、水産資源管理、海底資源開発、海洋環境保全などの施策はそのためにあると言っていい。
海をめぐる未来を確実なものにするには、海を舞台に活躍する人材の育成が不可欠である。
こうした人材は、漁業、海洋レジャー、海運など海上輸送に関わる人から、海上保安官、研究者までさまざまである。みな海との関わりに生きがいを見いだす人々であろう。
海洋教育の充実が急務
そういう点で海洋教育の充実が急務である。小さい時から海に親しむ機会を持たせ、地理の授業で日本の領土と共に世界6位の広さを持つ領海およびEEZを示すなど、子供たちの夢を広げるようにしたい。