中国の潜在的脅威忘れるな
積極外交で覇権具現化
憲法改正し急ぎ対抗措置を
憲法記念日に恒例行事として第19回公開憲法フォーラムに参加した。会場に着き式次第を見て驚いたのは、公明党の国会議員の名前が載っていたことである。しかも今の公明党の有力若手議員として活躍中の同党の憲法調査事務局長・遠山清彦氏の発言内容にも驚いた。もちろん良い驚きである。つまり公明党が自衛隊の存在と役割を評価し、国という概念を私たちと近いものを持ち始めているからである。
私はこの変化をもたらしたものはもちろん時代の変化であると同時に、中国共産党と北朝鮮労働党の度重なる挑発行為によって日本人の世論が覚醒されたためと推測した。もちろんそれ以外にもいろいろなことを想像できる。例えば公明党のバックにある某団体内部における何らかの変化、あるいはその団体と公明党との関係に新たな変動が生じている等々である。ただここでは結果オーライという立場で、まずこの新しい出来事を評価したい。
前に述べた北朝鮮と中国の脅威を現実問題として認識するようになった国民世論とややもすれば遊離しているマスコミ関係者や自称平和主義者よりも、選挙という現実を無視できない政治家の方が世論に敏感であるとも言えるのではないか。
安倍首相もこの時期を正確に捉え、憲法の改正に対し具体的に言及し始めた。当日放映されたビデオメッセージでも力強く改正の必要性と決意を訴え、しかも2020年までにという時間的制限を明確にした。安倍首相はその前日もメディア関係者に機が熟したと述べておられる。まさにその通りで、衆参両院において憲法改正発議に必要な3分の2の賛同を得られるような状況、そして押し迫ってきている中国、北朝鮮による脅威なども加味すると今まさに、その時期である。
北朝鮮の脅威に関しては、ある程度報道関係者も遠慮せず国民に事実を知らせており、政府もそのつど国民に情報を提供している。アメリカのトランプ大統領も今までの政権よりは強い姿勢で臨んでいる。それはそれで良いとして、心配になるのはいつの間にかもっと大きい脅威である中国の南シナ海、東シナ海などに対しての行動や北朝鮮の何倍もある潜在的脅威を忘れかかっている節がある。
世界がトランプ大統領や北朝鮮に気を取られている間、中国は活発に動き、例えば今回の東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相会議でも事前に根回しをすることでフィリピンのドゥテルテ大統領を説得し、結果的には同大統領の領海問題は2カ国間の問題であるという見解を押し通し、今までのような中国の南シナ海における人工島の増設や軍備に対する懸念や批判を盛り込んだ声明文も無かった。これを放置すると中国は東シナ海、南シナ海においては身勝手な行動が許されるという中国側の勝手な解釈にもなりかねない。
中国に対してはトランプ大統領の行動に理解しにくい部分もある。中国に圧力を掛けることで北朝鮮と中国の関係にくぎを刺し、さらに分断へと導いているところは評価できる。だが一方「わが尊敬する習近平」と言うトランプ大統領の言葉を耳にしたり、また選挙中中国に対し、不均衡な貿易を止めるため課税などを通して是正を図る、あるいは南シナ海をはじめとしてアジアの覇権を願っていると言って強く批判してきたことを考えると、直接でなくても親族などを通して間接的に鼻薬でも効かせられたかと思いたくなる。自分の周囲の公職まで家族で固めるところは、まるでどこかの絶対王政か軍事独裁の国のまね事にも見える。トランプ大統領は選挙公約および就任演説に基づき、国民との約束、世界への宣言を忘れるべきではない。
確かに習近平国家主席の訪米中、しかも自ら主催する夕食会時にシリアを空爆し、その事実を食事を終える間際に告げ、本来シリアの味方であるはずの習主席から理解を得たことなどを見ると、商売人ならではの巧みな心理作戦を展開しているようにも見える。何よりも面子を重んじる中国にとっては最大の侮辱を与えることでトランプ大統領自身の本気度を示したようにも取ることができる。
北朝鮮の行方は確かに目を離せない直近の危機である。だが中国の脅威はより大きく日本や周辺地域のみならず世界全体の未来に大きな影響を及ぼす存在であるが故、その行動に対しては厳しい監視と対抗措置が必要である。今回のASEAN外相会議などで見られるように中国は活発なロビー活動をして、着々と覇権を具現化している。政治や軍事の目的を達成するため、経済をフルに活用している。
日本は軍事的な対処ができなくても、経済力を背景に活発な外交を展開して中国の脅威を阻止する活動を計画的、戦略的そして持続的に行うことは大切である。それは安倍首相一人でできるものではなく、国全体が今の時代を正確に認識し真の永久平和を構築するため、国を挙げてできることを手遅れにならないうちに行動に移すべきではないだろうか。
野党民主党党首は、総理のための総理による憲法改正反対などと議論にならない空論を唱えているが、健全な野党になるため現実的な議論を展開するよう望む。