中国の海洋進出、急速な海軍力強化に備えよ


 2017年も、海洋強国を目指す中国の活動が止まらない。中国初の空母「遼寧」は南シナ海で艦載機の「J(殲)15」戦闘機や艦載ヘリの発着艦訓練を実施した。南シナ海での発着艦訓練は初めてとなる。

 空母が南シナ海で訓練

 今回の訓練は、対中強硬姿勢のトランプ次期米政権の発足を前に、南シナ海で軍事的存在感をアピールし、米国などを牽制(けんせい)する狙いがあるようだ。

 遼寧は昨年12月、沖縄本島と宮古島の間を経て初めて西太平洋を航行。その後、台湾とフィリピンの間のバシー海峡を抜けて南シナ海に入り、中国南部・海南島の三亜にある海軍基地に到着していた。これには、沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」を越え、伊豆諸島からグアムに至る「第2列島線」まで制空・制海権を確保して米軍の行動を排除する「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略を進める狙いがあろう。

 空母の派遣が容易になれば、航空戦力を速やかに展開できるようになる。中国海軍が従来の「近海防御型」から「遠海護衛型」へと脱皮し、行動に着手した表れである。国産空母の建造も進んでおり、25年には三つの空母打撃群を保有するとも言われている。

 一方、米海軍は原子力空母カール・ビンソンを中心に編成された空母打撃群を西太平洋に派遣し、対潜水艦作戦や砲撃訓練を含む軍事演習を行う予定だ。中国の急速な海軍力強化に備える必要がある。

 中国はオバマ米政権時代、南シナ海で七つの人工島を造成。人工島すべてで、航空機を攻撃する高射砲やミサイル迎撃システムなどの配備が確認された。しかし昨年7月の仲裁裁判所判決で、南シナ海における中国の「歴史的権利」は否定されている。それにもかかわらず「力による現状変更」を進めることは到底容認できない。

 もっとも昨年は米大統領選があったため、オバマ政権が掲げるアジア重視政策がうまく進んだとは言えない1年であった。中国には、オバマ政権の国際協調路線が弱腰と映っている。

 南シナ海の軍事拠点化を否定しながらも、言葉と裏腹に強引な海洋進出を続ける中国の行動は、沖縄県・尖閣諸島が位置する東シナ海で行われてもおかしくはない。

 尖閣周辺では中国海警局の船4隻が日本の領海に侵入するなど、今年に入っても挑発が続いている。また東シナ海で、中国は日中中間線付近でのガス田開発を活発化させている。この海域では13年以降、ガス田構造物が4基から16基に増加した。レーダー設置など、やがては軍事目的で使用されるようになるとも指摘されている。

 日米は圧力強化策を

 トランプ氏は南シナ海における中国の海洋進出を強く批判。中国本土と台湾は不可分の領土だとする「一つの中国」原則についても縛られる必要がないとの見方を示している。

 中国の西太平洋へのプレゼンスの拡大は米国への挑戦である。日本は米国をはじめとする国際社会と引き続き緊密に連携し、対中圧力強化策を実行しなければならない。