ダッカ襲撃テロ、秘密情報収集機関の創設を


 バングラデシュの首都ダッカでのテロで日本人7人が犠牲になった。現地での経済開発に協力している要員であり、痛恨の極みである。

 だが、これで国際平和確立のための活動や発展途上国への開発協力を尻込みすれば、テロリストの思うつぼである。

日本人7人が犠牲に

 今回のテロは、過激派組織「イスラム国」(IS)によって行われた可能性が高い。ISは、ダッカの事件後に発生したイラクの首都バグダッドでの自爆テロでも犯行声明を出した。先月末のトルコ・イスタンブールでのテロも、ISの犯行だとの見方が強い。

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2日、バングラデシュの首都ダッカで、襲撃された飲食店から運び出されるけが人(AFP=時事)

 しかし、ISは有志連合による反撃で次々に重要拠点を喪失しつつあり、資金源の原油価格の低迷もあって窮地に立たされている。ここで反撃の手を緩めてはならない。

 今回のテロでは、日本人の犠牲者の比率が非常に高いように思われる。これは偶然ではないかもしれない。

 レーニンは「資本主義は最も弱い環から崩壊する」と言ったが、ISの立場に立てば「包囲網を崩すには、有志連合の“最も弱い環”を脱落させる」ことが窮地から逃げ出すのに欠かせない。

 過去の日本のテロへの対応、テロ情報収集の秘密機関の欠如などを念頭に置けば、主要国の中で“最も弱い環”は日本ということになる。

 テロは1人から始められる戦いの手段であり、これを根絶させることは不可能事である。それを前提にするならば、テロ対策に肝要なのは事前に情報を入手することである。しかし、テロ情報は公開文書分析や外交官活動によって得られるものではない。

 テロ集団内の情報を入手するには、潜入工作員の活用、時には非合法、反道徳的活動も不可欠である。このため、第2次世界大戦前から、主要国の中で日本だけになかった秘密情報収集機関の創設が緊急の政治課題である。

 テロリストによる人質の救出のため、他国のような特殊作戦部隊の創設を説く向きもいる。しかし、テロリストが誘拐した人質は頻繁に居場所を変えるのが通例であり、その場所情報の入手のためにも秘密情報収集機関が欠かせない。

 現在、わが国はテロ情報面でも米国などに全面的に依存している。

 だが、いずれの分野の情報社会でも、情報入手は「ギブ・アンド・テイク」が大原則だ。日本が提供する情報がなくて、多額のカネをかけ苦労して収集した情報をくれる国があると思うのは安易すぎる。

政治家は恥じるべきだ

 米国など巨大な情報機関保有国でもテロが発生していることを挙げて、情報機関不要論を説く向きもある。それはマスメディアでは発生したテロは大きく報道されるが、未然に防止されたテロは報道されることはないからだ。

 情報の戦いは“知恵の戦い”であり、これに敗れ国民を犠牲にするのは、政治家として恥ずかしいことだとの自覚が必要である。