中国の海洋進出をサミットで強く批判せよ
主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が近づいてきた。難民問題や中東情勢、テロ対策、主要国の財政の在り方など国際社会のホットな議題が議論の中心になるとされる。
とりわけ日本としては、東・南シナ海で緊張を高める中国について協議を促す必要がある。
東・南シナ海で強化
1975年に始まり、毎年1回開催されるサミットは短い日程ではあるが、参加国首脳が議論を通じて問題解決への共通認識を導き出す意味では、極めて重要な会議である。
特に中国の覇権主義といっても差し支えない行動は、国際社会の大きな懸念材料として認識されている。
南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で中国が埋め立てた面積は、2015年末までに約13平方㌔に達し、14年末と比べて6倍超となった。ファイアリクロス(中国名・永暑)礁を含む三つの人工島には長さ約3000㍍の滑走路がそれぞれ整備されている。南シナ海で中国軍機が米軍機に約15㍍まで異常接近する事態も発生した。力による現状変更を試みることは決してあってはならない。
中国は東シナ海でも引き続き尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で海警局の艦船や航空機を使って監視活動を行っている。このほど発表された中国の軍事動向に関する米国防総省の年次報告書は「中国は衝突を招かないぎりぎりの範囲で自国の利益を推進するため、威圧的な戦術を使っている」との見方を示した。
また、中国軍の組織改編・装備近代化に向けた動きが「2015年に新たな段階に入った」と指摘。こうした動きは、中国共産党による軍の統制や軍の統合運用の強化、さらには「本土から遠く離れた場所での地域的紛争」への対処能力向上などの目的で実行されたと分析した。
さらに、地域各国との紛争発生時に米軍の介入を阻止できるだけの軍事力の構築を目指していると分析。大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、ステルス爆撃機などの近代化に力を入れ、技術開発が進めば「中国が陸海空の3本柱で核運搬能力を備える」ことになるとの見通しを示した。
中国はアフリカでの軍事的影響力も拡大しつつある。英国の国際戦略研究所(IISS)は「中国がアフリカの武器市場で顕著な進展を見せている」と指摘した。アフリカ51カ国のうち68%の国で中国の武器装備が使われているという。中国は昨年11月、アフリカ東部のジブチに海外初の海軍基地を建設中だと発表した。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の発表によると、中国の15年の軍事費は前年比7・4%増の2150億㌦。これは、世界の軍事費の13%に当たる。
国際社会の取り組み促せ
民主主義や法の支配といった普遍的価値を共有するG7としては、中国の独善的行動に対して強い反対のメッセージを発しなければならない。伊勢志摩サミットは中国問題を議論の俎上(そじょう)に載せ、国際社会の理解を得ることで更なる取り組みを促さなければならない。