中国弁護士拘束、共産党の暴挙に厳しい目を
中国当局が人権派の弁護士に対し、なりふり構わぬ弾圧の挙に出ている。著名女性弁護士の王宇さんらを一斉に連行・拘束し、その数は16日までに204人に達している。法秩序維持の一翼を担う弁護士を、正当な理由もなく拘束するという暴挙を見過ごしてはならない。
人権派への圧力強化
王さんは、多くの人権問題に取り組む「北京鋒鋭弁護士事務所」に所属する。法律を武器に横暴な権力に対抗し、政府への不満を強める陳情者ら社会的弱者の救済に当たってきた。
当局は王さんや同事務所の主任・周世鋒弁護士らを「騒ぎを起こし、秩序を混乱させる重大犯罪グループ」としている。中国では多くの富裕層を生み出した経済成長の陰で、都市部と農村部などの間で格差が広がっている。不満を持つ弱者の声に真剣に耳を貸そうとしない役所や役人が多い中、彼らが唯一頼りとするのが人権派弁護士だ。
中国では2011年、中東の「アラブの春」に刺激されて「茉莉花(ジャスミン)革命」と称して民主化の声が広がった時も、各地の弁護士が拘束された。今回はそれを遙(はる)かに上回る。人権派の「拠点」を摘発して「資金」「ネット空間」を一掃し、多数の弁護士らを見せしめにして人権派の行動を萎縮させることが狙いとみられる。
習近平政権は最近、「依法治国」を掲げている。しかし昨年10月の4中総会では「中国式法治」の堅持を弁護士たちに求めるなど、共産党による統制強化の手段の意味が強い。今年5月には著名な人権派弁護士の浦志強氏が、ツイッターに「相手(ウイグル族)を敵とみなすのは、滑稽な国策だ。新疆の政策は見直さなければならない」などと書き込んだことで「騒動を挑発した」として起訴された。
中国は改革開放の下で経済は一面で自由化、近代化されたものの、政治の方は逆に抑圧的なものとなっている。そういう国が、経済力と軍事力を背景に、アジアあるいは世界で覇権を追求した場合、国際社会にどんな災厄がもたらされるかは目に見えている。
そして注意しなければならないのは、中国の国内では今回の弁護士一斉拘束などの弾圧政策、国外では南沙諸島の埋め立てや軍事施設建設など力による国際秩序への挑戦が、だんだんと大胆、露骨になっていることだ。一方、各国の反応には中国との経済的関係などを背景にかなりの温度差が生まれている。
弁護士一斉拘束をめぐっては、米国務省のカービー報道官が「中国に対し、市民の権利保護に努めたために拘束された人々全員を解放するよう強く促す」と述べた。自由・人権を尊重する米国として当然である。
より実効ある抑止策を
国際世論の圧力は今のところ、中国当局の暴走を抑止し、人権派の人々を助ける唯一の方策であり、厳しい監視の目を向け批判していくべきだ。
だが、こうした批判を中国当局は織り込み済みとみられる。中国の人権や国際秩序に対する挑戦がこれ以上露骨なものになるのであれば、より実効性のある方策を自由主義国家は考えなければならない。
(7月17日付社説)