安保法案可決、中央突破はやむを得まい
自民、公明の与党が単独で安全保障関連法案を衆院特別委員会で採決し可決された。中国、北朝鮮、ロシアの軍拡などわが国を取り巻く安全保障環境の急速な悪化に対処するには一刻も早い抑止力の向上が不可欠だ。反対のための反対の議論が目立ってきたことからも中央突破はやむを得まい。
安倍晋三首相は参院での審議で説明作業を丁寧に積み重ね、国民の理解をさらに深めなければならない。
責任野党として失格
与党の採決に対して野党側は「議論が尽くされていない」などと反対したが、審議時間はすでに116時間を超えた。民主党などの質疑も同じ内容の繰り返しで深まりが見られなくなった。対案を提出した維新の党の狙いも、単なる採決の引き延ばしであるとの判断で審議打ち切りに至った。
きょう衆院本会議で採決の予定だが、野党側は本会議に出席して反対討論を行い、自党が考える安全保障政策や対案について改めて訴えるべきだ。委員会で「強行採決反対」などと書かれたプラカードを掲げ「反対」の大合唱をしたが、これでは国連平和維持活動(PKO)協力法案に牛歩戦術で反対し国民から失笑を買った旧社会党と同様のレベルだと言える。
委員会質疑では、政府・与党が示した武力行使の3要件や国会承認による歯止め論が明確で、合憲性に対する安倍首相の見解にもブレはなかった。一方、民主党は安倍政権が進める集団的自衛権の行使は認めないと言いながら、行使に関する自党の具体的な説明はなかった。対案を示さず政府案批判に終始したことは、抵抗野党の域を出ず、責任野党としては失格である。
維新は対案を国会に提出したがあまりに遅く時機を逸していたと言わざるを得ない。ただ、対案をまとめた以上、それを国民に訴え理解を求める責任があるはずだ。松野頼久代表は「まだ審議が足りない」と言うのであれば、本会議で自党案について訴え政府案に反対するのが筋ではないか。
それなのに民主、共産とともに本会議の討論には出席するが政府案の採決では退席するという。参院での早期審議入りに反対するための共同行動なのだろう。だが、これでは維新が本気で自党案を最良のものとして提出したのか疑問だ。
少なくとも、維新は政府案の対案以外に国会提出した領域警備法案の必要性についての論戦を参院で積極的に行うべきだ。同法案は民主党と共同提出したことから、民主党もその論議に加わるのは当然である。
政府・与党はこれまでのところ、自衛隊出動の手続きについては法整備をせず運用改善で対応するとし、「現時点では不要」との立場だ。しかし、かつては与党協議で検討した課題でもあるはずだ。
分かりやすい工夫を
政府・与党は通常国会としては過去最長の95日間の会期延長に踏み切った。国民の理解は不十分だと認める首相は、衆院の時以上に説明を分かりやすく工夫すべきだ。民主、維新などの野党も審議拒否で国会を空転させることがあってはならない。
(7月16日付社説)