ウルムチ騒乱5年、高圧的な少数民族政策改めよ


 中国・新疆ウイグル自治区の区都ウルムチ市で大規模騒乱が発生してから5年が経過した。

 騒乱の背景には、漢族支配を中心とした中国政府の少数民族政策への不満があった。今年に入ってからもウイグル独立派が関与したとされるテロ事件などが続発しており、反発は収まっていない。中国政府は高圧的な姿勢を改めるべきだ。

制限される言語や宗教

 騒乱の発端は広東省の工場で起こった漢族とウイグル族の対立とされ、これによってウイグル族の不満が爆発した。武装警官との衝突で、当局の発表によれば197人が死亡し、1700人以上が負傷した。

 だが、もっと多数の死傷者が出たとの見方もある。亡命ウイグル人で構成する世界ウイグル会議は「ウイグル族の死者は1000人から最大3000人」としている。

 新疆は清朝の支配下に置かれ、中華民国時代の1933年と44年に「東トルキスタン共和国」として独立を宣言した。しかし、49年に中国人民解放軍が進駐し、55年に自治区とされた。中国政府はウイグル語の使用や宗教活動を制限し、漢族移住を進めるなど文化的な「民族浄化」政策を実施してきた。漢族とウイグル族との間の経済格差も広がっている。

 さらに、自治区のロプノルに建設された核実験場で、中国は64年から96年まで延べ46回にわたって核実験を行った。この結果、19万人が死亡、129万人が深刻な放射線被害を受けたと推計されている。

 このような少数民族の文化や存在そのものさえも蔑(ないがし)ろにするような姿勢が、ウイグル族の反発を招いていると言えよう。習近平政権下では、中国語教育による少数民族の「漢化」が加速しているとされる。

 ウルムチでは今年5月、ウイグル族によるものとみられる車両突入・爆発事件が発生し、133人が死傷した。4月末にも習国家主席が現地を視察した当日にウルムチ南駅で爆発が起き、やはりウイグル族の関与が指摘されている。

 もちろん、いかなる理由があっても、こうした無差別テロは許されるものではない。しかし、中国政府はテロの背景にあるウイグル族の不満に目を向けるべきだ。

 中国政府は今年、自治区のインフラ整備に昨年の約3倍に当たる1兆元(約16兆3000億円)を投じる見通しだ。経済的繁栄の恩恵をちらつかせることで、ウイグル族を懐柔する狙いだろう。だが、民族としてのアイデンティティーが尊重されない限り、反発が収まることはあるまい。

 一方、地元当局は取り締まりを強化し、この1カ月間で約380人が拘束された。公安当局による安易な発砲も多い。また自治区では先月末、イスラム教のラマダン(断食月)が始まったことを受け、政府機関などが公務員や教員に、ラマダン中の宗教活動禁止を徹底するよう指示を出した。

締め付けは逆効果だ

 こうした締め付けは逆効果だろう。中国政府は少数民族の伝統文化を尊重し、強引な漢族支配をやめるべきだ。

(8月6日付社説)