ミャンマー デモで示された民意尊重せよ


 国軍によるクーデターが起きたミャンマーでは、大規模なデモが行われるなど抗議行動が続いている。

 治安部隊がデモ隊に発砲し、これまでに3人が死亡した。こうした暴挙は容認できない。国軍は民意を尊重し、政権の座から降りるべきだ。

 治安部隊発砲で3人死亡

 国軍はアウン・サン・スー・チー国家顧問やウィン・ミン大統領ら政権幹部を拘束し、ミン・アウン・フライン総司令官が立法・行政・司法の権限を掌握。期間1年の非常事態宣言を全土に発令した。

 スー・チー氏率いる与党・国民民主連盟(NLD)は昨年11月の総選挙で圧勝し、今年3月にも2期目の政権を発足させる見通しとなっていた。民主的な手続きを無視し、クーデターで実権を掌握した国軍が、ミャンマー国民や国際社会から批判を浴びるのは当然である。

 ミャンマーでは連日、クーデターに抗議する大規模なデモが行われている。一方、治安部隊はデモ隊に発砲し、首都ネピドーでは頭部を銃撃された女性が死亡。第2の都市マンダレーでも男性2人が死亡した。

 平和的なデモに対する発砲は断じて許されない。国連のグテレス事務総長はツイッターで「殺傷力の高い武器の使用や威嚇は受け入れられない」と非難し、民政復帰を訴えた。国軍はスー・チー氏らをすぐに釈放し、総選挙の結果に基づく政権樹立に全面協力すべきだ。

 ミャンマーのクーデターに対し、国連安全保障理事会はスー・チー氏らの「恣意(しい)的」拘束に「深い懸念」を表明する報道機関向け声明を発表した。声明案を作成した英国は当初、国軍の動きを非難することを目指していた。

 しかし声明に「クーデター」や非難の文言がなく、「深い懸念」という表現となったのは、声明発表に国軍と関係の深い中国を含む安保理全理事国の同意が必要だったからだ。ミャンマーが今後、国軍への非難を避けている中国との関係を深めることが懸念される。

 巨大経済圏構想「一帯一路」を進める中国にとって、ミャンマーはインド洋に通じる物流ルートの要衝で、東南アジア諸国連合(ASEAN)における友好国の一角を占める。中国の習近平国家主席は昨年1月に訪問した際、スー・チー氏、ミン・アウン・フライン氏の両者と会談した。

 中国とミャンマーの関係強化は、中国の海洋進出に対してシーレーン(海上交通路)の安全を確保するために「自由で開かれたインド太平洋」構想を進める日米などにとって大きな懸念材料だ。国内で少数民族の人権弾圧を行う中国の影響が強まれば、ミャンマーでもイスラム系少数民族ロヒンギャの迫害問題が一段と深刻化しかねない。

 日本は強く働き掛けよ

 一帯一路では、スリランカが多額の対中債務を抱えて南部のハンバントタ港を99年間中国企業に貸し出す「債務のわな」にはまった。ミャンマーがこうした事態を警戒していることも事実である。日本は、ミャンマーに民政復帰を強く働き掛けていく必要がある。