香港民主派逮捕 中国の人権弾圧に抗議の輪を
中国の香港国家安全維持法(国安法)による香港紙「リンゴ日報」創業者・黎智英氏、民主活動家・周庭氏の逮捕は、香港に民主主義を認めた国際公約「一国二制度」の破壊を繰り返す野蛮な人権弾圧である。自由と民主主義の価値観を平然と踏みにじる共産党独裁体制の中国の暴挙が、また一つ確認されたのであり、国際的な抗議、批判を強めるべきである。
立法会選挙も延期に
黎氏、周氏ともに保釈されたが、逮捕の理由は判然としていない。外国勢力と結託して国家の安全に危害を加え、国家分裂を扇動したなどの疑いが持たれたというが、港湾都市であり、観光地であり、国際金融センターの香港には世界の国々から自由に人々が往来してきた。
この自由こそが、共産党独裁体制の中国に都合の悪いものであると民主派逮捕で自ら認めたようなものだ。国安法は「一国二制度」の国際公約に反するものであり、自由主義諸国と交流が長い香港で「外国勢力との結託」など中国当局の解釈でいくらでもでっち上げが可能だ。
黎氏も周氏も破壊行為ではなく、言論や主義主張を取り締まられているのであり、極めて遺憾である。むしろ、国安法によって民主主義を叫ぶ人々を逮捕する人権弾圧を当局が正当化できる恐怖支配があからさまになった。同法施行によって、中国は林鄭月娥行政長官ら香港政府を魔の傀儡(かいらい)権力に変えたと言えよう。
来月には立法会議員選挙が行われる予定だったが、香港政府は新型コロナウイルス感染拡大を理由に延期した。海外では、香港以上に感染が拡大している国々でも対策を取って選挙を行う例はいくらでもあり、親中派に有利な仕組みの選挙制度をもってしても民主派勢力に敗北する情勢のためであると考えられている。
香港返還後の「一国二制度」の下で、行政長官選挙、立法会議員選挙、区議会選挙が行われてきた。選挙ならば候補者の舌戦で政権批判もあり、“政権交代”も起こり得る。メディアの論調もさまざまである。
ところが、民主派の立候補資格剥奪、負ける可能性が高い選挙の延期、報道関係者や活動家の逮捕など、先進的地域だった香港とは思えない変貌ぶりだ。中国共産党の「一国一制度」は許されないと、香港市民を守るためにも国際社会で声を上げていかなければならないだろう。
これまで中国は大陸奥地の目の届きにくい新疆ウイグルで、ウイグル人の男性を収容所に収容し女性に不妊手術をするなど武器を使わない“民族浄化”政策を過去から行ってきたことが最近、欧米の報道機関などで問題にされるようになった。
香港は国際都市であり、民主派逮捕には現地メディアやネットの交流サイト(SNS)でも抗議の声が上がった。このような注目がなければ、保釈が早くなされたか分からない。
暴挙許さぬ国際世論を
かつて、旧ソ連の反体制科学者のサハロフ博士が流刑で済んでいたのは、国際世論の注目も大きい。中国の人権弾圧を許さない世論の輪を世界に広げる必要はますます高まっている。