蔡総統2期目へ、中国の圧力から台湾を守れ


 台湾の蔡英文総統があす、2期目に入る。1月の総統選での圧勝後、徹底した新型コロナウイルス対策で感染拡大を抑え込み、台湾社会から幅広い支持を得ている。

 中国は「一つの中国」原則を受け入れない蔡政権への圧力を強めているが、蔡氏は台湾を守るために中国に強い姿勢で臨んでいる。台湾と自由や民主主義などの価値観を共有する日本や米国は、台湾との連携を強め、蔡政権を支えるべきだ。

評価されたコロナ対策

 蔡氏は1期目で公務員年金制度改革など「痛みを伴う」施策を断行した。その結果、支持率の長期低迷や2018年11月の統一地方選の大敗を招き、総統選についても「再選は絶望的」(外交筋)とまで言われる苦境に陥った。

 潮目が変わったのは、中国の習近平国家主席が昨年1月、「一国二制度」による中台統一方針を改めて打ち出したためだ。習氏は統一に向け、武力行使も排除しない強硬姿勢を示した。

 こうした中国に対して「われわれは一国二制度を断じて受け入れない」と述べるなど、毅然(きぜん)とした姿勢で臨む蔡氏の支持率は回復。香港で逃亡犯条例改正に反対するデモが繰り返され、台湾人の対中警戒感が一段と高まったことも、蔡氏にとっては追い風となった。

 香港では一国二制度が形骸化し、中国の政治的締め付けが強まっている。台湾人が反発するのは当然だ。総統選では「親中派」のイメージを払拭(ふっしょく)できなかった最大野党・国民党の韓国瑜・高雄市長に勝利した。

 中国は蔡政権にさまざまな圧力をかけてきた。蔡政権発足後、中国の資金援助を背景に台湾と断交した国は7カ国に上り、外交関係を維持するのは15カ国に減少した。

 今回の世界保健機関(WHO)年次総会も、台湾はオブザーバー参加を求めてきたが、中国の強い反対で参加できなかった。台湾の新型コロナ対策は世界的に評価されている。台湾との情報共有は国際社会にとって大きな利益となろう。この意味で、台湾を排除する中国の姿勢は人類の福祉に反するもので容認できない。

 一方、トランプ米政権は台湾との関係を強化してきた。18年3月に米国と台湾の高官往来を法的に裏付ける台湾旅行法を成立させたほか、昨年8月には中国の反発を懸念するオバマ前政権が拒否していたF16戦闘機の売却を決めた。対中牽制(けんせい)のため、米軍艦による台湾海峡航行も行われている。

 トランプ政権は蔡政権との関係を、南シナ海への進出を強める中国と対抗するための東アジアの安全保障政策の要とみている。地域の安定に向け、米台関係の重要性は高まっていると言えよう。

「日台交流基本法」制定を

 一方、蔡氏は総統再選後、ツイッターに「国民の声に謙虚に向き合い、不動の心で困難を乗り越え、同様に台日の絆を深めていきたい」と投稿した。

 日本は台湾との政治や外交、経済、防衛などの相互交流に関する「日台交流基本法」を制定し、中国の圧力を受ける台湾との関係を強化すべきだ。