香港民主派逮捕、感染対策を弾圧に利用するな
新型コロナウイルス感染拡大への対策で公共の場で5人以上の集まりが禁止された香港で、昨年の逃亡犯条例改正に反対する一連のデモを支持した民主派団体の重鎮ら15人が一斉逮捕された。中国共産党政権の意向を受けた香港当局の摘発とみられ、感染対策を政治弾圧に利用したとの民主派の批判は看過できない。
集会禁止に乗じた中国
香港警察が昨年8月と10月の「無許可デモ」に参加したとの容疑で18日に逮捕したのは、「香港民主の父」と称される李柱銘氏や立法会(議会)議員の梁耀忠氏、香港政府と中国共産党政権に批判的な論調を取ることが多い新聞「リンゴ日報」創業者の黎智英氏ら15人だ。
一連のデモには数万~100万人以上に及ぶ香港市民が参加したが、代表的な民主派の人々だけを標的にした摘発は、感染症対策の集会禁止で抗議行動が下火になった機会に乗じた中国当局の民主化運動への圧力と見て取れる。
中国は2月13日に、新型コロナ発生地の湖北省武漢市をはじめ全土で感染爆発の状態にありながらも、国務院香港・マカオ事務弁公室トップの張暁明主任を副主任に降格させ、主任に習近平国家主席の元側近であり、2014年の浙江省党委員会書記時代にキリスト教弾圧を強行した夏宝竜氏を充てた。
張氏降格はデモの引責であり、共産党政権内で宗教弾圧の実績が認められた夏氏が主任になってから、同月28日にも黎氏や民主派の元立法会議員2人が「違法集会」に参加したとして逮捕された。
今のところ、逮捕、起訴、保釈の繰り返しによる圧力が続いている。夏氏は浙江省で宗教者逮捕、キリスト教会の十字架の強制撤去、これに反対する信者らを公共秩序騒乱容疑で逮捕するなど、容疑をかけては摘発を繰り返すことにより人々を宗教から遠ざけていった。
香港でも同様な強硬策を取るものと懸念されており、民主派15人一斉逮捕について、米国ではポンペオ国務長官が「香港の民主派の運動家らの逮捕を深く懸念している。表現や平和的な集会の自由という普遍的価値に反する」とツイッターで表明。ペロシ下院議長は「感染症の危機に直面する中、香港の民主と人権は攻撃を受け続けている」と非難し、トランプ大統領に昨年秋に成立した「香港人権・民主主義法」の発動を促すなど超党派的に敏感な反応を示した。
しかし、香港政府の林鄭月娥行政長官は「中国政府の出先機関は香港事務への発言権を持っている」と、香港基本法の従来解釈とは異なる見解を立法会の議事運営に関連して示し、中国の介入を容認する構えだ。「一国二制度」がますます危ぶまれている。
国際社会は厳しく臨め
感染対策で香港は最高警戒レベルの措置を取っており、社会的距離を取るため、民主派はデモ・集会などの抗議行動ができない。
新型コロナ発生を隠蔽(いんぺい)し世界的流行を招いた責任もさることながら、感染拡大を政治弾圧に利用する中国に国際社会は厳しく臨むべきだ。