米の対北制裁法 圧力の実効性に期待したい


 米国で北朝鮮に対する新たな制裁法が発効した。北朝鮮と取引したり、その取引を助けたりした第三国の個人や金融機関を処罰する、いわゆるセカンダリーボイコットが主な狙いだ。国際社会による制裁網をあの手この手でかいくぐっている北朝鮮にさらなる圧力をかけるもので、中国のほかに親北政権下の韓国も想定しているとみられる。その実効性に期待したい。

ワームビア氏の死に因む

 この制裁法は2015年、北朝鮮へ観光旅行に行った際に当局に拘束され、昏睡(こんすい)状態で帰国した後、間もなく死亡した米国人大学生オットー・ワームビア氏に因(ちな)んで「ワームビア法」と名付けられた。

 ワームビア氏は滞在先のホテルにあった政治宣伝ポスターを持ち帰ろうとしたことで国家転覆陰謀罪に問われ、裁判所から労働教化刑15年を宣告され、収監された。

 ところが、その後、昏睡状態に陥っていることが分かり、米国政府が解放交渉に当たった結果、米国に移送され、家族たちに引き渡されたが、間もなく死亡。北朝鮮で拷問を加えられた疑いが浮上した。

 こうした暴挙を受け、米下院は北朝鮮企業などと取引する海外の金融機関や貿易業者、仲介業者について米国内資産を凍結し、口座開設を制限する「オットー・ワームビア北朝鮮核制裁法案」を可決させた。昨年末の上院可決とトランプ大統領の署名を経て、このたび発効した。

 これで第三国の個人と金融機関は北朝鮮との取引が事実上できなくなる。特に北朝鮮企業の約9割が利用すると言われる中国の金融機関が打撃を受け、北朝鮮への制裁効果は大きい。

 一方、韓国への影響もある。北朝鮮に融和的な韓国の文在寅政権下では一昨年、韓国の業者が北朝鮮産石炭をロシア経由で違法に韓国に輸入していたことが発覚した。

 これをめぐり決済に関わった銀行に対する捜査がうやむやにされた経緯もある。今後は似たような取引に対し、米国の厳しい目が向けられよう。

 米国ではワームビア法に先立ち、セカンダリーボイコットとして対イラン制裁法を成立させた。欧州の大手銀行4行がこの制裁法に違反し、総額130億㌦の罰金を科せられている。

 ただ、それでも北朝鮮はさまざまな方法で外貨獲得に走り、ワームビア法を無力化しようとするだろう。その一つが海上での「瀬取り」だ。

 国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議の履行状況を調べる制裁委員会専門家パネルが公開した年次報告書によると、北朝鮮は昨年1月から8月にかけ、禁止品目の石炭を370万㌧輸出したが、このうち280万㌧は海上で北朝鮮船籍の船から中国のはしけ船に積み荷を移す「瀬取り」だったという。

仮想通貨取引に要注意

 近年、力を入れている仮想通貨も有力な外貨獲得手段だ。

 専門家らの試算によると、年間15億㌦を稼いでいるといい、これらは違法貿易の決済や世界的な違法貿易ネットワークの運営などに使われ、監視対象となる金融機関を経由しないので取り締まりが難しい。要注意だ。