アフリカ社会を蝕む汚職 アルアハラム政治戦略研究所アフリカ担当主任アマーニ・タウィール女史に聞く

貧困・テロ・感染症の温床に

 アフリカは、依然貧困と紛争のただ中にある。さらにエイズや各種伝染病などの感染症が国民を苦しめている。エジプトのアルアハラム政治戦略研究所アフリカ担当主任、アマーニ・タウィール女史に、アフリカの現状と課題を聞いた。
(聞き手=カイロ・鈴木眞吉)

責任企業の進出願う

600 ――アフリカの深刻な貧困問題、感染症問題をいかに解決するか。

 歴史的にアフリカは、植民地化された地域で、植民地支配国家はアフリカの資源を奪ってきた。多国籍企業は、アフリカの各国政府指導者などエリート層を買収し腐敗させた。

 汚職の影響は甚大だ。経済や軍事、治安面で弱体化し、国家として極めて脆弱(ぜいじゃく)になっている。もともとアフリカには多くのセクトや異なった人種があり、国家としての統一性がない。だから、アフリカの国は、現代的な基盤を基礎にしたプロジェクトをつくることができない。そのこともまた、貧困を増やし、エイズなどの感染症を拡大させているのだ。エイズは、アフリカの人々をヨーロッパに不法に移民させる原因にもなっている。

 ――アフリカの紛争の原因と、その対策は。

 植民地支配国家が過去に国境線を引いた時、アフリカの種族構成に注意を払わなかった。アフリカの各種族間での境界線をめぐる紛争をより増大させた。アフリカは分裂し、独立後も国家として極めて脆弱だ。

 ダルフールの例を見るなら、そこに軍事紛争があったため、90年代のスーダンは、世界銀行からの教育・保健面でも支援を受けられなかった。そのことがダルフールをさらに限界に追い込んだ。欧米の、アフリカ改革についての条件は非現実的だ。どうして既に極度に貧困な人々への支援を取りやめてしまうのか。そのことは広い社会的な抵抗をつくり出し、抗争を生み、次第に軍事的闘争へと発展していく。

 アフリカの発展には、多くの企業の進出が必要だ。しかし汚職に関与する企業には制裁を科すべきだ。私はこの点について、中国や米国の企業関係者と議論したが、管理と監督の不在が、汚職を増大させている。

 抗争が東スーダンで発生すると、それがケニアやウガンダに拡大し、紅海沿いの地域にも拡大するといった具合だ。紅海は、重要な貿易の国際水路で、不安定化は当然欧米や日本や中国にも影響を与える。

 アフリカは、緊張環境が増大している。シナイ半島から大西洋の砂漠までの多くの国々、例えば、ナイジェリア、ニジェール、マリ、スーダンなどで拡大している。緊張環境増大は、過激主義者を生み出し、至る所に過激主義者やテロリストを輸出することになる。

 ――中国のアフリカ進出のもたらす影響は?

 中国のアフリカ支援の問題点は、決してアフリカ人労働者と一緒に働かないということだ。中国がアフリカ連合(AU)ビルをエチオピアのアディスアベバに建設した時、彼らはこのプロジェクトを贈り物としてエチオピアに与えた。ところが、建設に携わる全てのエキスパートは中国人だった。全ての労働者も中国人だった。エチオピア人にはただ鍵を与えただけだった。これがアフリカにおける中国のやり方だ。

 一方、中国は、最も質の悪い製品を、エジプトを含むアフリカに輸出する。高品質なものは豊かな国に送る。中国は、輸出入のバランスを考えず、利益だけを考えている。

 豊かな国のアフリカ政策は、アフリカの資源を略奪するだけではないものに変わるべきだ。最近、フランスやブラジルに対する多くの批判がある。彼らはまだ、アフリカを植民地と見なして関係を持っているからだ。