朝鮮戦争の実態 日本共産党も武力で“参戦”

戦後70年 識者は語る(13)

沖縄県元副知事 牧野浩隆氏(下)

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 ――ソ連、中国、北朝鮮という共産主義勢力による朝鮮戦争勃発を契機に、沖縄の基地が米軍の戦略基地として位置付けられた。当時の日本を取り巻く共産主義勢力の動向はどういうものだったか。

 ソ連共産党を中心とした世界の共産主義勢力の司令塔となるコミンフォルムが1947年にできた。49年には中国の共産革命が成功し、ナンバー2の劉少奇がスターリンに会った。そこでヨーロッパは自分が責任を持つから東南アジアは中国が責任持てと分業関係を指示し、コミンフォルムの極東支部の担当者が中国になった。中国は共産主義関係者の世界大会を北京で開き、劉のテーゼ「革命は暴力で始まる」と申し付けた。日本共産党もそれを受けて後に中核自衛隊を作った。

 ソ連自体は、北朝鮮が南(韓国)を征服すれば朝鮮半島は共産化され、次は日本だと狙っていたのである。

 ――日本共産党が展開した活動とは。

 49年1月の総選挙で共産党はいきなり35人が当選した。喜んで9月革命説を出し、自分たちの次の内閣を決めた。野坂参三がソ連経由で中国から帰ってきて占領軍の中での平和革命は可能だと言っていた。ところが、50年1月、スターリンも中国も暴力革命を指示した。日本共産党はそれを受け入れ、50年10月の「共産主義者と愛国者の新たな使命」を発し実行していくことになったのだ。マッカーサーは「憲法に基づいて成立された国家を暴力で倒そうとする連中を法律で保護する必要があるだろうか」とし、韓国から北朝鮮に攻め込んだとウソを書いた機関紙「赤旗」を発行停止し、日本共産党の主要メンバー二十数名に出頭を命じたが、そこから逃れた幹部が北京から暴力闘争の指令を出していたのだ。

 ――具体的な暴力闘争について。

 52年の血のメーデー事件をはじめ、大阪の枚方と吹田、名古屋の大須など600件ぐらいの事件事故を起こした。米軍基地の後方撹乱(かくらん)の指示も出ていた。中核自衛隊という武装組織を作って地下活動し、北海道から九州まで配置。球根栽培法、栄養分析表などと称して火炎瓶や武器の作り方を指導した。武器をどう調達するかというと、米軍基地からぶんどる。51年10月には「日本共産党の当面の要求」をスターリンと一緒になって書き、それを実践した。日本共産党は武力によって朝鮮戦争に参戦したのである。

 ――沖縄が復帰して共産党だけでない左翼勢力が台頭してきたが。

 朝鮮戦争が起きそこに中国が参入し、米国はそれを「新しい戦争」と位置付け戦々恐々としていた。そこで米国は沖縄基地づくりのために52年から土地の収用を始めた。そこで米国が土地代を出したら非常に安かった。そのため地主は軍用地主会を作って値上げ交渉をした。米軍はこんな要求をするのであれば一括で買い上げる、となった。学校の先生や公務員労組らは一括買い上げは領土を売る国土の問題だとした。つまり、軍用地主は経済闘争、知識人らは理念として一緒になって島ぐるみ闘争が始まったのである。

 その後、58年から59年にかけて、土地代は何倍かに値上がりし、買い取りではなく毎年払いにしたことで、地主は納得し決着した。だが、理念として参加した人たちはこぶしを下ろしようがなくなり、60年4月に沖縄県祖国復帰協議会を作って復帰運動を始めた。その時は祖国復帰が理念として位置付けられたので国旗「日の丸」は運動の象徴とされた。

 しかし65年になって佐藤栄作総理が沖縄返還交渉に取り組みだした。革新団体は即時無条件復帰を主張した。理念として平和憲法により沖縄の基地はなくなるだろうと考えたのである。

共産主義者に健全な安保観を

 もう一つは、社会党の帆足計という中国派の代議士の存在だ。ソ連主催の経済大会がモスクワで開催されたが、日本政府はパスポートを出さなかった。帆足ともう一人はスウェーデンのビザを取って出国。モスクワ経由で中国に入り、中国と民間貿易協定を結んで帰ってきた。

 彼らは沖縄に目を付けて、沖縄の本土復帰運動を利用して日米安保をぶっ潰(つぶ)そうと入れ知恵をした、と指摘されている。復帰協はその時点から基地撤去、日米安保反対、日の丸を取り下げよと主張するようになった。つまり、ソ連、中国が帆足を通して日米安保反対の突破口を開こうとしたわけだ。

 ――米軍基地の果たしてきた役割は。

 日米安保は国際平和を守っていこうという国連憲章を論拠としている。その意味で日米安保はその大きな役割を果たしてきたしアジア太平洋の繁栄と安定にいっそう必要である。しかし、米軍基地が沖縄に過度に集中していることは異常だ。その認識に立ちつつ、基地問題を沖縄だけの問題にするのでなく、日本全体の問題としてとらえて過重な負担を応分なものにすること、すなわち、沖縄の政治、経済の安定化を図ることが日米安保体制を安定強化するために絶対不可欠であると考えていくことが重要である。

 歴史的には、冷戦を起こしたソ連、中国の外部からの問題と、内部からそれに忠実に従った日本共産党および進歩的な左翼的知識人の問題がある。彼らの共産主義を理想像とみなした幻想と、その幻想に基づいて全面講和、非武装中立、日米安保反対を主張する偽善を指摘し、彼らにそのことを明確に認識させ、健全な安全保障観を抱かせるようにすることが不可欠である。

 キャンプ・シュワブで反対している大多数は県外の人だ。一見、沖縄のことを思っているようだが、そもそも沖縄に米軍基地がつくられたのは彼らの先達に原因があるのであって、自分たちも等しく基地を引き取るといわないと単なる偽善となる。彼らにも責任を意識させることが必要だ。

(聞き手・早川一郎)

(終わり)