防衛論議主導した民社党

 先日、ある月刊誌の編集部から「書評を書いてほしい」との依頼を受けた。本のタイトルは梅澤昇平著『“革新”と国防 民社党防衛論争史』(桜町書院)だ。

 本紙読者の中には「民社党」という名前を聞いて、懐かしく思う人もいるだろう。私にとっては、政治・防衛問題に興味を持つきっかけを与えてくれた政党でもある。

 今回、改めて民社党内での防衛論議の歴史を勉強することができた。梅澤氏は、民社党事務局で長年にわたって防衛・憲法問題を担当してきた一人だ。

 梅澤氏は本書の冒頭からいきなり、「結論から言えば」と前置きをした上で「民社党は国の防衛政策について自民党を多くの点でリードしてきた」と述べている。

 実際、当時の政治情勢(55年体制下)から言えば、野党だった日本社会党、公明党、日本共産党は防衛問題については「何でも反対」のスタンスだったが、民社党だけは違っていた。自民党と協議に臨んで、賛成や修正の合意を図ってきた。防衛政策について、現実的な対応を取ってきたのが民社党だった。

 だが、本書を読み進めると、そこに至るまでの間、防衛政策についてさまざまな議論が党内で交わされたことがうかがえる。

 その背景には、民社党は当初、社会党から分かれた政党であり、左派社会党に近い人も民社党結党に参加していたからだ。

 一方、梅澤氏は「集団的自衛権行使について部分的だが一歩前進したのは、一昨年の安倍内閣の時だ。民社党の決断から20年もかかっている。有事法制もそうだったが、民社党は小党だったこともあるが、20年先を先取りするパイロット政党だったかもしれない」とも述べている。

 現在も民社党が存在していたら、国会閉会中に審議するテーマも「加計学園の獣医学部新設」の問題ではなく「北朝鮮の度重なる弾頭ミサイル発射実験」のような問題を取り上げるように自民党に迫ったに違いない、と私は思うのだが……。

 野党第一党である民進党に、その役割を期待するのは無理なのか?

(濱口和久)