令和参院選 兵庫、与党2へ公・維・立が混戦
2016年参院選で、改選数が3に増えた兵庫選挙区で24年ぶりに議席を得た公明。今回も「最重点区」と位置付け、てこ入れを図る。日本維新の会や立憲民主も交えた混戦が展開される中、組織票の奪い合いにより自民と公明の間では不協和音も聞こえる。
公示が迫った2日、神戸市内のホテルで開かれた公明新人、高橋光男の激励会。官房長官菅義偉が「高橋を戦いに勝利させてほしい」とひときわ力を込めて訴えると、大きな拍手が湧き起こった。
菅が高橋支援のために兵庫入りするのは、6月に続き2度目。出席者約5300人のうち公明が集めたのは1100人程度で、大半は菅の人脈によるものだという。会合後には、各自治体の首長が公明出身の国交相、石井啓一に直接要望する機会も設けられた。
昨年12月、自民から高橋への推薦を得た公明は党を挙げての「兵庫シフト」を敷いた。とりわけ力を入れるのが業界団体の支援取り付けだ。県建設業協会から今回初めて推薦を得たほか、県歯科医師会も助勢を約束。推薦団体はゆうに100を超える。
港湾業界の組織票を狙い、高橋の後援会長には日本港運協会会長の久保昌三を「三顧の礼」(党関係者)で迎え入れた。 自民は公明のこうした動きを苦々しく見ている。県連幹部は「うちの友好団体に手を出すことは3年前はなかった」と憤る。同幹部は公明の支持母体が創価学会であることを踏まえ、「県神社庁にも推薦をもらいに行っているとのうわさすらある。悪いジョークだ」とげんなりした顔で語った。
自民は昨年末に死去した元防災担当相鴻池祥肇の後継に、元県議の加田裕之を担いだ。4日の出陣式で加田は「次世代のため、日本のため政策を実現する」と意気込んだ。県連会長の谷公一は「鴻池先生のような知名度がない。混戦から抜け出してない」と出席者にハッパを掛けた。 加田陣営は地方議員と連携し、非改選の末松信介と同程度の60万票は獲得したい考え。ただ、幹部は「うちの票がどの程度、公明に流れるか読めない」と不安を隠さない。
自民が露骨に公明への不快感を示す理由の一つに、維新の存在がある。本拠地大阪で4月に行われた府知事、市長、衆院補選で誇示した勢いは、隣県の兵庫にも波及している。自民県連幹部は選対委員長甘利明に「はじかれるのは公明か、うちか立憲だ」と訴えた。
維新現職の清水貴之に強固な地盤はないが、全県を回って「東京一極集中を打破するためには兵庫が、関西全体が強くなるのが一番大切だ」と支持を呼び掛ける。3日に神戸市内で開いた集会には大阪府知事の吉村洋文が駆け付け、「関西の利益を代弁している政党は維新だ」と胸を張った。
「国の政治が国民に対して上から一つの価値観を押し付けてしまうような社会になっている」。立憲新人の安田真理は9日朝、神戸市のJR垂水駅前でこう訴えた。公認は3月と遅れたが、兵庫で唯一の女性候補であるのは強みだ。
安田陣営は、安倍政権との対立軸を鮮明にして、政権批判票を取り込む作戦だ。選対幹部は「維新は野党ではない。政権と対峙(たいじ)するのは立憲だ」と語気を強める。今後も党幹部を次々に投入し、自公維の一角崩しを狙う。 (敬称略)(時事)
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