裏切られた楽観的見方


 中澤孝之日本対外文化協会理事の話 「大山鳴動してネズミ一匹」-やや厳しい言い方かもしれないが、「北方領土問題に限って言えば」、そうとしかコメントしようがない。「何かしか動く」(鈴木宗男氏ら)という楽観的見方は外れ、元島民の期待は裏切られた。このことは直前の日本のメディアとのインタビューでの「ロシアに領土問題はない」というプーチン大統領の言葉で予測された。大規模な経済協力も領土問題解決、平和条約締結につなげられるかどうか全く不透明だ。

中澤 孝之

 領土問題での具体的な進展が皆無だった一方で、北方領土での共同経済活動はもともと90年代終わりにロシア側が提案していたテーマであって、目新しくない。外務、防衛担当閣僚会合の「2プラス2」の再開も、スタート地点に戻ったに過ぎず、ビザなし交流の拡大(元島民の自由往来)が領土解決に結び付くとは思われない。領土問題で肝心なのは、「主権」(領有権)がどちらにあるかなのだ。「返せ]「返せ」だけでは何も進まない。

 北方領土問題のキーポイントは何か。そのヒントを在京の某有力ロシア人記者が明かした。南クリル(北方領土)の“引き渡し”に最も強硬に反対しているのは軍部で、ロシア人はオホーツク海を「自分たちの湖」と考えており、ロシアにとってオホーツク海は、巨大な核ミサイル発射台でもあるという。経済協力程度では、“2島引き渡し”への見返りとして全く妥当ではないというのだ。

 また、今回の来日に、8月に就任した知日派のアントン・ワイノ大統領府長官をプーチン大統領が同伴しなかったことに注目したい。ワイノ長官は日露交渉に直接タッチしないことを示唆しているのかもしれない。