参院選、将来見据え責任ある選択を


参院選への視点

政治部長代理 武田滋樹

 今回の参院選は憲政史上初めて20歳未満、18歳以上の有権者が参加する歴史的な選挙だ。新しい有権者と共に原点に返り「政治は結果に責任を持つべきだ」という観点から今度の選挙の争点を点検したい。

安倍晋三総裁

自民党・安倍晋三総裁

 最大の争点となるのは、政府の経済政策「アベノミクス」を加速するかどうかだが、当然ながら、与党は今までの経済実績に対する審判を受けなければならない。なぜ消費税の再増税ができない状況になったのか、どこを改善すれば2019年10月に再増税をしても国内総生産(GDP)600兆円を達成できるのか、国民を納得させる必要がある。

 民進党はアベノミクスは失敗したと断定し、その代案として、分配と成長の両立により潜在能力を引き出すと主張する。ただ具体的な政策として掲げる「人への投資」「働き方革命」(同一価値労働同一賃金)は、かつて「成長より分配」、「人への投資」を強調した民主党政権の経済政策と大差がない。

 当時、子ども手当や農家への個別所得補償を進めたが、鳴り物入りで実施した「事業仕分け」で当初期待した「埋蔵金」を掘り当てられず財源確保に失敗。また長期デフレ脱却を主導する経済の成長エンジンを見いだせなかった。この結果をどう受け止めて克服したのか、民進はその点をもっと説明すべきだ。

 安全保障の分野では、昨年成立した安全保障法制が審判台に上る。日米同盟強化の契機になったにもかかわらず、同法制への不理解はいまだにある。その結果に対し、与党は一層の説明努力が必要だ。

 これに対し野党は同法制の白紙化や廃止を訴えている。日米安保条約の廃棄と自衛隊の解散を綱領に明記する共産なら、同法制廃止の公約は当然だ。しかし、普天間飛行場の辺野古移設問題や尖閣諸島をめぐる中国との対立で日米同盟の重要性を痛感した民主党の流れを引く民進としては、あまりにも安易な公約ではないか。

 また、民進は「安倍政権下での憲法改正には反対する」と言っているが、それでは民進はどんな憲法を作りたいのか。もう何年も前から「(未来志向の憲法を)国民とともに構想する」と唱えているが、実際の行動は反対ばかりだ。自党の憲法草案を掲げて正面から論争を挑む民進(野党第1党)を夢見る有権者は決して少なくないはずだ。

 参院選は政権選択の選挙ではないが、その結果は政局に大きな影響を及ぼす。国の将来を見据えてどの政党の政策が有用なのか、有権者として責任ある選択が必要だ。