技術立国目指すフィンランド、産官学挙げて起業家育成
「持続可能な開発と生活の質向上を促進する技術革新」に対して贈られる「ミレニアム技術賞」の授賞式が5月、ヘルシンキ大学で行われ、米国人の生物化学工学研究者フランシス・アーノルド教授にニーニスト大統領からトロフィーが贈られた。
(ヘルシンキ・吉住哲男)
自然の進化を模倣してたんぱく質を作成する「進化分子工学」の分野を切り開く発見をしたことが評価された。
この賞は、技術革新の推進を目的に、学術機関、産業界、政府が共同で設立したフィンランド技術賞財団(TAF)が設けたもので、賞金は技術賞として世界最大の100万ユーロ(約1億2000万円)。2006年には青色発光ダイオードを開発した中村修二教授が受賞した。
財政赤字、雇用促進など多くの課題を抱えている北欧の小国フィンランドは、イノベーションに力を入れていくことで新たな国造りに取り組んでいる。
かつては豊かな森林資源を用いた製紙・パルプが主要産業だったが、1990年代後半以降、ICT(情報通信技術)を中心とする知識集約型経済へと移行。フィンランド経済を支えてきた携帯電話大手ノキアの経営悪化により、多くのスタートアップ企業が誕生した。
ノキアを去った多くのIT技術者らが、その技術を用いて起業、ノキアも特許を公開し、創業資金を援助している。政府は起業・創業支援政策に力を注ぎ、大学ではスタートアップ支援プログラムを立ち上げるなど、国を挙げて起業家育成に取り組んでいる。
昨年日本でも開催された世界最大規模の起業イベント「スラッシュ」はフィンランドが発祥だ。
雇用経済省イノベーション局長ペトゥリ・ペルトネン氏は、「温暖化問題など世界には解決すべき課題が多く、フィンランドの技術革新推進プログラムはそれらの課題を解決することに貢献できると考えている」とフィンランドのイノベーション推進政策の意義を強調した。