プレス民主の衆院補選、敵失でも控えめな反撃
野党4党で金権政治批判
政権を獲(と)って国民から見放された民主党。この“政権ショック”はトラウマとならないか懸念される。あたかも免許取り立ての若葉マークの時に起こした大事故から生涯ペーパードライバーとして過ごすかのように、「政権交代」を再び口にすることなく批判だけを繰り返す反対野党への保身である。
民主党の機関紙「プレス民主」から「政権交代」「政権獲得」が消えて久しい。政権担当した3年余は別として、以前の「選挙、選挙」の野党時代と比較して一番の違いがこれだ。まだ、言い出せる政治状況にないという自覚もあろうが、萎縮すると反対野党を演じたとしても迫力不足の気迫負けで、チャンスをものにできなくなる。
その恐れ多しと見なければならないのが、衆院鹿児島2区補欠選挙だ。27日に投開票される鹿児島2区補選は徳洲会グループの選挙違反事件で自民党を離党した徳田毅氏の衆院議員辞職によるもので、「政治とカネ」の問題だ。本来なら民主党が得意とする勝負のはずだ。
一応、プレス民主も3月21日号、4月4日号で同補選を8面(最終面)で取り上げている。「政治への信頼取り戻す選挙に」「打越明司氏の推薦を決定」(3・21)、「金権政治に終止符を」「打越あかし氏の推薦を決定 民主、維新、結い、生活の4党」(4・4)などだ。記事中には「政治とカネに対する自民党の体質と対峙していかなければならない」(3・21)、「4党は政治とカネの問題に決着をつける必要があるとの認識で一致、国民から信頼される政治を取り戻すために共闘していくことになった」(4・4)など、徳田氏の議員辞職の経緯を争点化しようと試みている。
しかし、同紙からは迫力を感じない。それは1面に「民主党への提言」という有識者のアドバイスが続いているためだ。識者の提言はそれぞれ有意義である。しかし、自信喪失した民主党の「自分探し」が続いている印象である。2012年12月の衆院選から1年4カ月が経(た)ち、通常国会での本予算成立も2回を数えた。未だに「民主党とは何か」という議論が集約していないのではないかとさえ思える。
こうなると敵失でチャンス到来となっても反撃が控えめと映る。民主党衆院議員だった打越氏を、党公認でなく無所属推薦という形になったのも弱気である。もともと自民党県議だった打越氏が自民党の公認争いに敗れ民主党からの衆院選出馬(2009年比例区復活当選)となったことや、徳洲会グループ(=野党・自由連合)の徳田氏が自民党で公認された経緯、奄美大島を抱える独特な選挙区事情、幅広い選挙協力を得ようとするなど複雑な選挙区事情もあろうが、まだ「民主党」の看板を前面に押し出せないのだ。
なお、自民党機関紙「自由民主」は3月25日号1面で「全党一丸で勝利めざす」「金子万寿夫氏を公認」の記事を、4月22日号1面で「地域活性化」を訴え同補選告示の記事を載せた。
解説室長 窪田 伸雄