【社説】こども基本法案 コミッショナーは左翼思想


自由民主党本部

 自民党内の「こども基本法案」をめぐる論議が紛糾している。法案への明記が検討されている第三者機関「コミッショナー」の考え方が、権利偏重の左翼思想だと保守派議員から異論が出ているのだ。

 保守派議員から懸念の声

 子供の人権尊重と、彼らが健全に育つための基盤となる家庭への支援は一体として考えられるべきものだ。もし、わが国の子供政策が今後、判断力が未成熟で欲望に対する自己抑制力も不十分な子供を「権利行使の主体」と捉えて実施されたのでは、児童虐待などから子供を守ることにならないばかりか、日本の将来も危うくなる。自民党には偏った思想を排除した基本法案の提出を求めたい。

 政府は2023年度に子供政策の司令塔となる新組織「こども家庭庁」を設置するための法案を、今国会に提出する。それに合わせ、与党は子供の人権を守るための理念などを盛り込んだ基本法案の提出を目指しているが、新組織がどのような理念で設置されるのかは、当初からの懸念材料だった。

 新組織の名称は昨年末まで「こども庁」が想定されていた。しかし、自民党保守派の声で変更された経緯がある。「家庭」を抜いた名称に子供の権利偏重の左翼思想の影響が表れていたためだが、肝心の理念法となる基本法が偏った思想で作られたのでは名称変更が無意味となる。

 コミッショナーをめぐる論議はその懸念がいまだに払拭されていないことを示している。コミッショナーは独立した第三者機関で子供の意見の代弁者と位置付けられる。子供の人権侵害を認定した場合、行政機関に勧告するなど強力な権限を持つことが想定される。自民党の「『こども・若者』輝く未来実現会議」の会合では保守派議員の懸念の声が相次いだ。

 「左派の考え方だ。恣意的運用や暴走の心配があり、誤った子供中心主義にならないか」(山谷えり子元拉致問題担当相)、「個人を大事にし、それを拘束するものは悪であるというマルクス主義思想があり」(城内実衆院議員)などだ。もっともな懸念である。

 逆に、「子供の権利を守る機関を置かないと、党のイメージへの影響は破壊的だ」(阿部俊子衆院議員)といった賛成意見もあった。もし与党が選挙戦略から子供政策を考えているのであれば、それこそ国を危険にさらすことになろう。

 権利の行使と欲望の抑制は本来、一体として考えるべきものだ。人格的に未熟で自己の欲望を抑えられない大人によって引き起こされる事件が児童虐待ではないか。子供の人権を尊重する社会を築き、虐待被害児をなくすことがこども家庭庁の創設目的の一つであるとすれば、子供の時からの教育で自己抑制力を身に付けた大人を育てることも重要な政策課題になろう。

第三者機関は創設するな

 道徳・規範教育によって自己の欲望を抑制することのできる若者を育てるという考えとは逆に、欲望の解放が人間の幸せにつながると捉えるのが左翼思想の特徴だ。子供の欲望の代弁者になる恐れのある第三者機関は創設すべきでない。