【社説】各党代表質問 真摯なオミクロン対策議論を
通常国会で岸田文雄首相の施政方針演説などに対する各党代表質問が始まった。新型コロナウイルス変異株のオミクロン株が猛威を振るい、1日当たりの新規感染者数が過去最多を記録している。政府・与野党を挙げてコロナ対策の議論を建設的な対処へと導くことで国難を乗り越えることを期待したい。
新規感染者数が過去最多
衆院で最初に質問に立った立憲民主党の泉健太代表は、政府の新型コロナ対策はまん延防止等重点措置、緊急事態宣言の発令要件などオミクロン株以前の感染力を想定しているとして、早急に感染力の強いオミクロン株を前提とした対策に変更することを迫った。感染急拡大の状況は看過できないものがある。
首相は「現在の医療体制の逼迫(ひっぱく)度に重点を置いたレベル分類を踏まえた総合的判断という考え方に変更はない」と答弁したが、従来の方針の繰り返しに聞こえることから守勢に立たされた印象だ。また、立民はこれまで感染症を含む危機管理の司令塔創設を訴えていたが、泉氏は首相が感染症の司令塔機能強化など危機管理の抜本策をまとめる時期を6月としたことについて「遅過ぎる」と追及した。
昨年のデルタ株流行の時期にも司令塔強化策が議論された。新型コロナの国内初確認から2年も経ており、遅過ぎるとの批判は当を得ている。デルタ株感染は沈静化したが、目下オミクロン株の拡大で今までにないペースで感染者が急増している。
東京都の新規感染者は19日、過去最も多かった昨年8月13日の5908人を1000人以上も上回る7377人になった。その4割以上が2回のワクチン接種をしており、ワクチンの発症予防効果が落ちていることは明らかだ。発令要件の見直しは避けられないのではないか。
憲法改正について、首相は施政方針演説で国会の積極的な議論を呼び掛けた。泉氏は「論憲の立場」で「立憲主義を深化させる立場から国会においても真摯(しんし)に憲法議論を行っていく」と述べたが、野党第1党としての存在感を示して憲法論議に臨むことは重要だ。また泉氏は首相に、自民党の改憲案に沿って憲法への自衛隊、緊急事態条項、高等教育の無償化などの明記について要不要の考えを問うた。
一方、自民党の梶山弘志幹事長代行は憲法改正について「現行憲法の自主的改正は自民党の結党以来の党是だ」と述べ、「条文イメージとして自衛隊の明記、緊急事態対応、合区解消・地方公共団体、教育充実の4項目について国民に示し、衆参の憲法審査会を安定的に開催し、憲法改正に関する議論を深めていくべきと考えている」と訴えた。与野党の憲法論議がさらに深まることを期待したい。
首相は自民党案には触れず、「憲法の在り方を決めるのは国民であり、憲法改正に関する国民的議論を喚起していくため、国会議員が国会の内外で議論を積み重ね、発信していく必要がある」と述べるにとどめたが、国会議員の責務は大きい。
改憲案発議は崇高な役割
憲法改正案を国民に発議することは、国会が持つ崇高な役割である。今国会を憲法の在り方を決める一歩としてほしい。