【安倍元首相インタビュー】改憲「機運醸成されてきた」
自民党の安倍晋三元首相は時事通信のインタビューに応じ、憲法改正について、衆院選で与党が勝利し、議論に前向きな日本維新の会、国民民主党が議席を伸ばした結果を踏まえ、「だいぶ機運は醸成されてきた」との認識を示した。インタビューは15日に行った。
安倍氏は首相在任中の2017年、改憲推進派集会に寄せたビデオメッセージで20年の新憲法施行を掲げた。このときの狙いについて「モメンタム(勢い)をつくろうと思った」と説明。今後の展開に関しては「憲法審査会に任せた方がいい」と語った。
岸田政権については「最大の試練だった衆院選で大勝を収め、安定政権となる基盤ができたのではないか。これからは実行力が問われる」との見方を示した。
自身の3度目の首相就任に関しては「全く考えていない。岸田政権を支えていくことが責任だ」と否定した。「ポスト岸田」では茂木敏充幹事長を有力候補の1人とした。台湾情勢については、度重なる中国軍機の防空識別圏進入に触れ「今の段階でも平穏な状況ではないとの認識を持たなければいけない」と指摘。日本の対応としては「国際社会との連携を強めていくことが大切だ」と語った。
【安倍元首相インタビュー要旨】
▼自民党の安倍晋三元首相のインタビュー要旨は次の通り。
11月に派閥会長に就任した。
自民党最大の政策グループの会長として、次々に党や日本を支える人材が輩出されるように力を尽くしていきたい。
岸田政権をどう見ているか。
最大の試練だった衆院選で261議席という大勝を収め、安定政権となる基盤ができたのではないか。これからは実行力が問われる。
政権の新型コロナウイルス対策について。
おおむね国民にも評価されていると思う。感染力の強いものは完全に防ぐのは難しくなる可能性がある。ワクチン、治療薬の開発と承認をスピードアップしていく必要がある。
台湾有事の可能性は。
10月にはたった4日間で149機(の中国軍機)が防空識別圏に進入した。今の段階でも平穏な状況ではないとの認識を持たなければいけない。
日本の対応は。
国際社会との連携を強めていくことが大切だ。国際社会が懸念を共有し対応する意思を示すことで、中国に平和的な台頭へとかじを切らせなければならない。
憲法改正をめぐり選挙で示された民意は。
2019年参院選で改憲議論を訴え勝利を得た。議論すべきだという共通認識はできている。その上で今回(の衆院選で)議論を主張する日本維新の会が議席を増やし、世論の変化の中で国民民主党も議論しなければいけないという考えを示すようになった。それが参院選、衆院選の結果だ。
重視する項目、目標時期は。
後は憲法審査会に任せた方がいい。今、喫緊の課題は自衛隊明記と緊急事態(条項の創設)だろう。かつて目標を立てたのは、モメンタム(勢い)をつくろうと思ったからだが、今はだいぶ機運は醸成されてきた。あえて目標年を明示する必要はない。
3度目の首相就任を期待する声がある。
全く考えていない。岸田政権を支えていくことが責任だ。
茂木敏充幹事長は「ポスト岸田」の有力候補か。
その1人だと思う。
茂木氏のどういう部分を評価しているか。
結果を出す能力だ。日米貿易交渉でも、選対委員長としても結果を出してくれた。
(時事通信社インタビュー)