東日本大震災と自・公、「緊急時対応」の法制化を

複合災害「想定外」と認識

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東日本大震災3周年追悼式で黙とうする安倍晋三首相(最前列中央)ら=11日午後2時46分、東京都千代田区の国立劇場(代表撮影)

 東日本大震災から3年を経過し、自民党の機関紙「自由民主」(3・18)は1面に「復興加速化の決意新たに」の見出しで「大島理森党東日本大震災復興加速化本部長に聞く」を載せ、公明党の機関誌「公明」4月号は「東日本大震災3年―復興のさらなる加速を」の特集を組んだ。震災発生時野党だった両党は民主党政権の遅い対応を批判した 。

 大島氏は「自由民主」で、「復興加速化のための緊急提言」(昨年3月、自公まとめ以下同)、「『復興加速化のための緊急提言』を具体化するために緊急に取り組むべき課題」(同6月)、「原子力事故災害からの復興加速化に向けて」(同11月)などの提言を安倍政権が受けて、着実に復興は進んでいると述べた 。

 しかし、依然として復興の進展は遅いという印象が被災地にはある。「岩手と宮城のがれき処理は今月までに完了する見通し」(大島氏)との一例を見ても、がれきの片付けだけでも3年以上を要する。家屋などの再建はその先だ 。

 「公明」の特集に青森公立大学教授・山本恭逸氏が「進まない個人の生活再建」と題する記事で、復興庁のデータから「復興において最も先行しているのが行政による社会資本整備である。逆に最も遅れているのが個人の生活再建である」と述べている。また、「生活は個人の自助努力による自立が原則であり、行政は極力介入しないことが基本」「中小企業に対する支援も、個人商店に対する支援も同様である」と、「行政の基本原則」を指摘した。各世論調査で「復興の実感」が乏しいのは被災者「個人」が回答するからだろう 。

 その不満を政治家も意識している。大島氏は「自由民主」で「いまひとつ申し上げておきたいことがあります。それは、『この大災害から何を学ぶか』です。…今回、新たに『想定外は存在する』ことを学ばなければならない」と訴えた 。

 「公明」の東北大学大学院情報科学研究科准教授・河村和徳氏と井上義久幹事長による巻頭対談にも「広域・複合的な『想定外』の中で」の見出しがある。河村氏は「今回の震災のキーワードは『絆』ではなく、『想定外』ではないか。…過去の震災とやはり違うというのも、広域・複合的なためで、復旧・復興に3年以上かかっているというのも初めての経験だ」と発言。これに井上氏は「政治の世界は『想定外は禁句』といわれるが、確かに被災の現場に行って実情を目の当たりにし、多くの訴えを聞く度に、気が遠くなるような思いになった」と述べている 。

 野党から与党になって復興にあたった自公共通の実感が「想定外」である。大島氏は「自由民主」で、複合的大規模災害へ備えるため「我が国の緊急時対応をもう一度点検し、万端の備えをすることこそ、政治の原点」と強調し、「国民(ひと)の生命(いのち)の安全保障」体制の確立を訴えた。「想定外は禁句」(井上公明党幹事長)なら、具体的な法制化を進めるべきである。

解説室長 窪田 伸雄