【社説】立民代表選 枝野路線の反省なき争い
衆院選敗北の責任を取って辞任した立憲民主党の枝野幸男前代表の後任を選ぶ代表選がスタートした。立候補した逢坂誠二、泉健太、小川淳也、西村智奈美の4氏は共同記者会見で党勢回復や野党共闘の在り方などについて見解を表明した。
しかし、共産党との連携を反省し枝野路線の転換を主張する候補はいなかった。これでは責任ある国民政党へ脱皮することはできないし、党勢の浮揚につなげることも難しい。
共産との連携を継続
今回の代表選は、野党第1党の「党の顔」として来年夏の参院選を枝野氏に代わって指揮する指導者を決める選挙だ。だが、候補者はいずれも閣僚未経験で知名度も低く指導力も未知数であるため、投票権のある地方議員や党員・サポーターにとっては判断が難しい側面もあろう。それだけに、共同記者会見での発言が注目された。
だが、いずれも党勢回復につながる効果的な方策を示せず、地味な主張を並べただけにとどまった。「具体的な地域課題を解決していく」(逢坂氏)、「期待感や魅力を総合的に増やす」(小川氏)、「批判ばかりの党のイメージを反省する」(泉氏)、「足腰が弱い地域組織を強化する」(西村氏)といった抽象的な内容で、有効策を打ち出すことができず、党を立て直す気概もうかがえなかった。
問題なのは、重要政策を横に置いて選挙対策を最優先課題に据えたことだ。4氏とも外交・安全保障政策では日米同盟を維持し現実路線重視の考えを示した。ところが、選挙の話になると、自民・公明との「対立ありき」の姿勢が鮮明になって「1対1の構図を作るのは当たり前だ」「自公が嫌がること、自公にとって最も脅威となることを野党がまとまってやっていく」などとし、共産との連携継続を4氏そろって主張した。
立民の中には、先の衆院選で共産の支援が得られなければもっと多くの議員が落選していたとの見方をする議員もいる。だが、日米安保条約廃棄を党是とし、自衛隊など他の基本政策でも大きな違いのある共産と、限定的ながらも「閣外協力」をするとの合意までしたことで、支持団体労組「連合」の反発を招き、国民からの野合批判により被ったダメージは計り知れない。
立民にとって深刻な課題は、枝野路線で失った党への信頼をどう回復し責任政党へと脱皮するかのはずだ。新代表は真っ先にその方策と見通しを掲げなければならないのに、連携の継続が「当たり前」というのでは「期待感や魅力」をアピールすることは難しいだろう。
肝要なのは、共産との距離感を明確にしつつ、国民が納得できる政策の代替案を提示し自公に対して真っ向から戦いを挑むことではないか。政権批判やスキャンダル追及ばかりに熱心では「政権の受け皿たり得る政党」(小川氏)になることは不可能である。
「数の論理」に陥るな
共産は今後、立民への抱き着き戦術を強めよう。革命のパートナーとならないためにも、票を当てにする「数の論理」に陥らないことが必要である。