立民共産協力 政策選挙の実現に責任を持て


 東京都議会議員選挙の一部選挙区で選挙協力した立憲民主党と共産党は、議席増加の成果を挙げたことを評価し、近く行われる衆議院選挙に向けて小選挙区での選挙協力を本格化させようとしている。共産が野党連合政権を唱えて政権参加に意欲を示していることから、政策の違いの大きい立民の責任政党としての姿勢が問われよう。

都議選で議席増える

 都議選で共産は改選議席18から19議席に、立民は同8から15議席に増加した。このうち立民が共産候補に一本化する選挙協力で共産が得た選挙区の議席は、文京区、豊島区、北区、日野市、北多摩4区から5議席。共産が立民候補に一本化する選挙協力で立民が得た選挙区の議席は、渋谷区、中野区、立川市、武蔵野市、三鷹市、小平市(無投票)から6議席だ。

 選挙協力しなければ共産は文京区、日野市、北多摩4区などを落とした可能性があり、立民は協力で得た議席がなくても微増ながら議席を増やしたとみられることから、今回の都議選においては改選数割れを免れた共産に政治的利益の大きい選挙協力だったと言える。

 菅義偉政権を苦しい状況に追い込む新型コロナウイルス感染拡大の中で、東京五輪・パラリンピック中止を争点化した共産は、各世論調査で約3~4割の中止論の追い風を受けるかに見えたが、同党単独ではむしろ議席を減らした可能性があることは重要なことだ。立民との野党共闘によって救われているのは共産であるのが実情だ。

 一方、立民は国民民主党から分党した議員らの合流を得て野党第1党の位置を安定させることで注目度をこれまでよりも増すことができたはずだ。だが、枝野幸男代表が自民党に代わる選択肢として有権者に届いていないとの認識を示した通り、共産を交えた「野党共闘」が前面に出た結果、党のカラーが薄まり、かつての「二大政党」効果に至らないままだ。

 ところが、立民は都議選での共産との選挙協力で「如実に成果は出ている」(安住淳国対委員長)と評価しており、自らの候補者当選だけに目を奪われている。衆院選で「政権交代に現実味が増した」(同)という言葉について、枝野氏は共産の政権参加を否定するが、共産は都議選後もますます「野党連合政権の実現」と叫び、自らの参加を前提に訴えている。

 しかし、衆院選挙区に小選挙区比例代表制を導入したのは政策選挙の実現のためであり、政権打倒ありきで基本政策の異なる政党同士の数合わせは好ましいことではない。特に共産主義体制を標榜(ひょうぼう)する綱領と反米反安保路線を堅持する共産と、日米安保条約を堅持するとする立民とは、反政権の共通項が政権交代で失われれば水と油の関係にすぎない。

 過去の失敗を繰り返すな

 政策選挙をゆがめる小選挙区の野党共闘によって仮に政権に就いたとしても、その先には2009年の民主、社民、国民新各党による政権樹立後の混迷以上の混乱も予想される。立民が真に政権を担う責任政党であれば、過去の失敗を繰り返さない道を選ぶのが肝要だ。