太平洋・島サミット 米と連携し中国の進出抑えよ


 日本と太平洋島しょ国・地域の首脳会議「太平洋・島サミット」が開かれ、菅義偉首相は年内に計300万回分の新型コロナウイルスワクチンを供与するなど支援計画を表明した。きめ細かい支援で太平洋の島国との絆をより強固なものとする一方、米国やオーストラリアと連携しながら中国の同地域への進出を抑えていく必要がある。

 「債務の罠」の可能性も

 今回で9回目となる同サミットには、日本、豪州、ニュージーランドを含めた19カ国・地域の首脳が参加。共同議長を務める菅首相は、中国を念頭に「権威主義との競争など太平洋地域が新たな挑戦に直面している今こそ、さらなる結束が求められる」と訴えた。

 ワクチンの提供について菅首相は、輸送車両や保冷庫などコールドチェーン(低温物流網)整備に必要な支援を行うことも表明。「保健医療体制の強化やその後の経済支援を含め包括的な支援を実施する」と強調した。

 「キズナ政策」として打ち出された支援策には、このほか気候変動問題、防災での協力推進、開放性、透明性などを重視した質の高いインフラ支援などが挙げられる。経済支援をてこに影響力を強める中国に対抗し、きめ細かい支援で絆を強めようとするものとして評価できる。

 中国の援助攻勢によって2019年、キリバスとソロモン諸島は台湾と断交し、中国と国交を結んだ。中国はサモア、トンガ、バヌアツにも支援を強化しており、これら諸国が債務返済ができず港湾などの権益を奪い取られる「債務の罠」に陥る可能性も指摘されている。

 中国は小笠原諸島やグアムを結ぶ「第2列島線」にまで進出し、さらに遠方のアリューシャン列島からハワイ、米領サモアを経てニュージーランドに至る「第3列島線」までも狙う気配を見せている。南太平洋の島しょ国の多くは両列島線の間に位置する。その東側のキリバスでは、中国が老朽化した滑走路の修復計画を進めているとロイター通信は報じている。

 同地域の海洋覇権の変更は、米中の軍事バランスを覆しかねない。それは当然、米国と同盟関係にある日本の安全保障に深刻な影響を及ぼす。どれも小さな島国であるが、戦略的な重要性は実に大きい。

 中国の進出を抑えるには米国との連携が重要だ。ミクロネシア連邦、ナウル、キリバスの3カ国で計画する海底通信ケーブルの敷設で日本とフランス、中国の企業が入札に参加したが、最低価格を提示した中国企業が事業主体となる可能性が高かった。それを米国との連携で退けることができた。

 米国はパラオ、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦との間に「自由連合盟約」を結び、経済援助を与える代わりに3国の安全保障を統括する立場にある。第2列島線上に位置し、重要な位置を占めるパラオには昨年、エスパー国防長官(当時)が訪問し連携強化を確認している。

 日本は民生分野の支援も

 日本は米国と連携し、安保や情報通信に関わる支援を進める一方、得意とする民生分野での支援を受け持って同地域との関係強化を進めていくべきだ。