自民第1党奪還、衆院選へ戦略の再検討を


 秋までに行われる衆院総選挙の前哨戦と位置付けられた東京都議会議員選挙が投開票され、前回惨敗した自民党が第1党を奪還した。しかし、躍進と言うには程遠く、全員当選した公明党と合わせても過半数には届かなかったことから、前途多難な都議会運営が予想される。

 自民執行部は伸び悩んだ原因を徹底的に精査し、反省すべき点があれば反省して対処しなければならない。その上で衆院選への戦略を再検討して臨まなければ、厳しい戦いとなることは避けられまい。

 「油断」で躍進できず

 今回の最大の注目点は、自民が前回初陣ながら第1党となった「都民ファーストの会」(都民ファ)の46議席からどれだけ議席を取り戻せるかだった。結果は、自民が25議席から8議席増やした程度で、都民ファは31議席を獲得して第2党に踏みとどまった。

 この要因は、都民ファ特別顧問の小池百合子知事が最終日に応援に入ったことが大きい。自民内には「小池氏の演出にやられた」との声もある。確かに、小池氏の最終段階での登場が投票先を決め切れていない無党派層に影響を与えたことは間違いないだろう。小池氏も当落線上の候補者に絞って応援に回った。

 しかし、そのことだけが伸びなかった原因ではないだろう。「油断」がなかったかが第一に問われるべきだ。小池氏は告示3日前に過労による体調不良で入院し応援体制ができていなかった。組織力が弱く前回のような旋風の吹かない都民ファの苦戦が最後まで続くと楽観視していなかったか。

 新型コロナウイルス対策のまん延防止等重点措置の下、東京の新規感染者数が日々、前週同曜日を上回り、「ステージ4」(爆発的感染拡大)の兆候が表れたことも、対策を主導する自民党・菅政権への不信につながったと言える。感染対策の必要性を訴えるすべての候補者の中で、政権与党の自民、公明の訴えは響かずに失速した。

 一方、五輪の無観客開催が現実味を帯びてくる中で、そのことを初めから訴えてきた都民ファ候補の演説のボルテージは高まった。結果として、菅政権のコロナ・五輪対策への評価が獲得議席数に反映したのである。今後の対応次第で内閣支持率が左右されるため、緊張感を持って先手先手の対策を打つことが求められる。

 「政治とカネ」の問題でのお詫(わ)び行脚もマイナスになった。地元選出の国会議員複数の逮捕や議員辞職により、自民への信頼が大きく揺らいだ。衆院総選挙でも広島での不透明な選挙資金疑惑が改めて問われよう。しっかりと説明責任を果たし出直しを鮮明にしなければ自民の苦戦は必至だ。

 早急に補正予算案を

 立憲民主党と共産党による選挙区一部の「すみ分け」戦術は奏功したと言える。衆院選に向けて小選挙区での候補者調整が進むことになろう。

 これに自民はどう臨むのか。小選挙区の公認候補選びを進めるとともに、野党の景気刺激策に見劣りしない大規模な補正予算案を公約メニューに掲げる作業も急ぐべきである。