東京都議選告示 コロナ後も見据え論戦を


 任期満了に伴う東京都議選がきょう告示され7月4日に投開票される。主要政党が国政並みの選挙と重視し、秋の衆院選の前哨戦と位置付けている。

 定数127を争う戦いとなるが、小池百合子都知事が特別顧問を務める最大会派の都民ファーストの会が勢力を維持できるか、自民、公明両党が過半数を獲得して主導権を回復できるかが最大の焦点となる。

 与党都民ファに初審判

 4年前の都議選と異なるのは、小池知事が生みの親となって圧勝した都民ファーストが初めて審判を受けることだ。前回、自民党との対決を前面に出した小池知事は、今回、東京五輪・パラリンピックを成功させるため政権与党の自民党との協調が求められている。新型コロナウイルス対策でも「オール東京」で臨まざるを得ない。

 その小池知事が過労によって入院したため、積極的な支援を受けられなくなる可能性の大きい都民ファーストとしては「第1党維持」を目標に掲げているが、組織的基盤がなく厳しい戦いとなるようだ。五輪の無観客開催とコロナワクチンの接種加速を求めるという公約だけでなく、今後4年間という任期を念頭に「コロナ後」も見据えた東京改革案を示して審判を受けるべきである。

 57から過去最低の23へと議席を減らし歴史的惨敗を喫した自民党は、大幅な議席増になるとの見方が多い。小池旋風はもはや吹かずワクチン接種が順調だからというのが主な理由であるが、油断は禁物だ。

 統合型リゾート(IR)事業をめぐる汚職事件で都内選出の秋元司衆院議員が逮捕され、菅原一秀前経済産業相は略式起訴され衆院議員辞職に追い込まれた。都政が国政の影響を受けやすいことから、元法相の河井克行元衆院議員の公選法違反による実刑判決などで逆風は強まろう。「政治とカネ」の問題を真摯(しんし)に反省して出直す謙虚な姿勢を示さなければ、世論の風向きを変えることはできまい。

 一方、前回、共産党と民進党が掲げた「民共共闘」は、共産党だけが議席を伸ばす結果となった。今回、立憲民主党と共産党が選挙区のすみ分けを図って臨んでいる。しかも、両党は自民・公明と違って五輪の中止あるいは延期を主張している。だが、五輪開催の準備が着々と進んで出場選手や国民の意識が高揚し、ワクチン接種数が日ごとに増えていく中で、この戦術が奏功するかは疑問だ。

 都民が判断すべき政策は他にも多い。政府の地震調査委員会は30年以内に70%の確率で首都直下地震が起き、最大2万3000人の死者が出ると予測している。この防災・減災やウイルス感染などとの複合災害にどう対処するのか。

 五輪警備のため、警視庁や全国の警察から過去最大規模の動員がなされる。世界中で拡散されているテロへの取り組みも問われるべきだろう。

 熟慮し責任ある投票を

 国難の真っ只中(ただなか)であるだけに、有権者には五輪開催の是非はもとより、コロナを克服した後の東京改革をどう進めるかの各党案を比べて熟慮し、責任ある一票を投じてもらいたい。