バイデン初外遊 中国とロシアの接近に備えよ


 バイデン米大統領は1月20日に就任後、初めて外国を訪問。コロナ禍対応に余儀なくされたこともあり、大統領就任5カ月目であった。初外遊を前に、中国、ロシアの顕著な連携強化がみられた。中国とロシアの関係はこれまで「便宜的なパートナー」とも言われてきたが、現在は中露同盟の可能性も取り沙汰されている。

民主主義国の支持固める

 バイデン氏は欧州を訪問し、英国、ベルギー、スイスに滞在して多くの首脳会議や2国間会談に臨み、民主主義国との信頼回復、提携強化に向けてまずまずの出だしを見せた。外交の実効性を高めることがはっきりしたバイデン初外遊だったと言える。

 まず、米英首脳会談で「新大西洋憲章」に署名。民主主義と開かれた社会の原則、ルールに基づく国際秩序を確認(宣言)した。先進7カ国(G7)首脳会議は世界の諸問題に対して方向付けを行う役割を果たした。

 ブリュッセルに移動した後は、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議と欧州連合(EU)首脳会議に出席し、中露包囲網構築に向けて主要民主主義国の支持を固めた。

 米露首脳会談(ジュネーブ)は核軍縮やサイバー犯罪について、新たな対話の枠組みを設けることで合意を見た。だが、首脳の相互訪問についての言動はなかった。

 一方、中国、ロシア両専制主義国家の接近がみられ、欧米の専門家の間では警戒心が出ている。中国とロシアは、歴史的にも幾度となく戦争を繰り返してきた。相互に根深い不信感を抱えており、一定の距離を取る姿勢を示している。とはいうものの、現在の全体的な両国関係の緊密化はもはや否定し難い。

 2020年12月28日、プーチン大統領と習近平国家主席の電話会談で習氏は「新時代に向けて両国の行動調整を強化し、関係を包括的な戦略的パートナーシップへ格上げする」と公言。プーチン氏は「来年、両国は露中善隣友好協力条約調印20周年を共に祝う」とエールを返している。同条約の第9条は事実上の防衛協定であり、第7条と第16条には軍事的関係の強化が謳(うた)われている。

 5月19日、習氏とプーチン氏はロシアが協力し江蘇・遼寧両省に建設する計4基の原子力発電所の着工式にオンラインで参加。習氏は「中露関係をより高い水準、広い分野、深いレベルで発展させることにプーチン大統領と合意した」と強調。プーチン氏は「露中関係は歴史的に最上の時期、最高の水準にある」と強調した。中露が対米共闘態勢を強める意思を明示している。

 ともあれ、バイデン初外遊は民主主義陣営の連帯を強めた。バイデン氏は「米国が戻ってきたことを世界に示したと確信している。民主主義国家を結集し、世界が直面している最大の挑戦に一致した対応を促した」と、手応えを強調した。

闘いの先頭に立つべき米

 民主主義対専制主義の闘いを掲げるバイデン氏は、その専制主義国家に位置付けるロシアと中国の闘いの先頭に立たねばならない。