北方領土の日 4島返還に強い決意示せ


 41回目の「北方領土の日」を迎えた。第2次大戦末期に旧ソ連は、当時有効だった日ソ中立条約に違反して一方的に宣戦布告し、火事場泥棒のように択捉島、国後島、歯舞群島、色丹島を奪って現在に至るまで不法占拠を続けている。

 菅義偉首相はきょう開催の北方領土返還要求全国大会に寄せるビデオメッセージでロシアに改めて抗議するとともに、4島返還に向けた強い決意を明確にすべきだ。

露が改憲で「割譲禁止」

 ソ連は1945年4月、あと1年余り有効だった日ソ中立条約の不延長を通告した。条約に違反し対日侵攻するという目論見(もくろみ)をわが国は見抜けず「なお1年間は有効である」と考え、連合国との講和の仲介をソ連に要請し続けた。

 そして8月8日、ソ連は日本に対し一方的に宣戦布告し、機甲部隊を中心とした150万の大軍を当時日本の勢力圏にあった満州国に侵攻させた。日本がポツダム宣言を受諾し終戦を迎えた8月15日以降も侵攻は続いた。歯舞、色丹を含む北方領土全域が占領されたのは、日本が降伏文書に調印した9月2日よりも後の9月5日だった。

 それだけではない。ソ連は旧日本軍人や民間人ら約60万人を国際法に違反してシベリアに抑留し、飢餓や酷寒の中での過酷な強制労働に従事させて約6万人を死に至らしめたのだ。

 しかし、われわれは過去の歴史に必要以上にとらわれようとは思わない。未来を見詰め、隣国であるロシアとの友好関係を築いていきたいと願っている。だからこそロシアがわが国と同様な考えを持ち、未来に向けた誠実な対応を行うことが不可欠である。

 「私とプーチン大統領で終止符を打つ」と、北方領土問題解決に強い使命感を持った安倍晋三前首相は計11回訪露し、プーチン氏と27回を数える会談を行った。北方四島の「共同経済活動」提案を切り口にロシアを領土交渉のテーブルに着かせ、プーチン氏がかつて認めた日ソ共同宣言を基礎として、領土交渉を加速させるところまでこぎ着けた。

 だが、ロシアがわれわれと同じ思いを持つことはなかった。昨年7月には「領土割譲の禁止」を明記する憲法改正を行った。メドベージェフ安全保障会議副議長(前首相)は、北方領土問題を含む日露平和条約締結交渉に関し、日本側の北方領土の主権主張を「お題目」と表現。日本政府は領土問題解決を条件にした現在の交渉方針では条約締結は不可能だと認識しているが、国内のコンセンサスに縛られて方針撤回ができずにいると、皮肉交じりに指摘した。

 ロシアは北方領土に最新鋭戦闘機スホイ35やT72型戦車、地対空ミサイルなどを配備し、軍事拠点化を進めている。

一人一人が関心高めたい

 このようなロシアに対しわが国は、国民の総意としての北方四島返還要求を改めて示し、交渉に臨むべきである。今回の北方領土返還要求全国大会は、インターネット中継で誰でも視聴することが可能だ。国民一人一人が返還運動への関心を高めることが、一層求められている。