菅氏、外交など楽観許さず


    ポスト安倍 宰相の条件(中)

    評論家 八幡 和郎氏

     自民党総裁選挙の行方は、菅義偉官房長官の圧勝が確定的で、岸田文雄政調会長と石破茂元幹事長が激しい2位争いをしているといわれる。

    やわた・かずお 昭和26年滋賀県生まれ。東京大学法学部卒。通産省情報管理課長など歴任。徳島文理大学教授。国士舘大学客員教授。現在、作家・評論家として活躍。著書に『歴代天皇列伝』(PHP研究所)『政界名門一族の査定表』(宝島社)など多数。

    やわた・かずお 昭和26年滋賀県生まれ。東京大学法学部卒。通産省情報管理課長など歴任。徳島文理大学教授。国士舘大学客員教授。現在、作家・評論家として活躍。著書に『歴代天皇列伝』(PHP研究所)『政界名門一族の査定表』(宝島社)など多数。

     私は安倍首相が辞意を表明する前、政権交代は来年だろうと言われていた頃、菅氏は有力な後継候補だが、官房長官から直接、首相になることは、好ましくないといっていた。

     第1に、モリカケ桜といった事件を幕引きにするかどうかという安倍政権の棘をそのまま引きずってしまう。

     第2に、官僚人事に政治の意向反映も大事だが、そのときの政権とうまくいかなくても政権が代わればまた登用されることもあるということが、テクノクラートが専門家として成長していくためにも必要だ。ところが、8年間も官房長官として人事を握ってきた菅氏がそのまま首相になるのでは風通しが悪くなる。そこで、秋の内閣改造で経済閣僚にでもなって、ワンクッション置いた方がいいと思ってきた。

     第3は、外交交渉に菅氏も同席したりして知識は磨いてきただろうが、やはり閣僚などとして自分で対外交渉を経験することが必要だ。トランプ米大統領はじめ各国首脳と良い個人的関係をつくり、臨機応変に自分で判断できた安倍首相とは大きなギャップがある。

     もちろん、菅氏にはたたき上げとしての強さはあるし、携帯電話料金の値下げとか、ダムの洪水調整機能の向上とか素晴らしい実績もあるし、総理になったら個別問題で剛腕をふるって評価されると思う。しかし、上記のような課題をどう乗り切っていくのか、楽観はできない。

     石破氏は安倍政権に対して党内野党であり続けた。そういう立場を打ち出しつつ政権を取ることが可能なのは、政権が致命的に国民の支持を失い、石破氏の協力なくしては過半数を失うという場合だけだ。

     その場合には、自民党を救うための防波堤になることも可能だし、飛び出して野党と組んで政権奪取もあるだろう。しかし、残念ながら安倍首相が辞めると言ったら、安倍政権の時代を7割の国民がポジティブに評価し、内閣支持率が2割も上がったのだから、石破氏に今回は居場所はない。しかも、問題を並べてこれから議論しましょうなどというのは、お粗末にすぎる。

     岸田氏については、安倍首相から暗黙の後継者指名を受けたのも同然だった。安倍首相にしたら、5年も外相を見事な仕事ぶりで務めたし、リベラル色が強いにもかかわらず憲法改正はしっかりやると約束したからこそ禅譲してもいいと思ったのだろう。

     しかし、どうして、外交は自分しかできないとか、憲法改正はやるとか言わないのだろうか。不思議でならない。また、中間層への重点的援助というのは良い発想なのだが、具体策はなにも言わない。

     間違いなく、菅氏が勝利して総理・総裁になるだろうが、不安はいっぱいである。そのときには、岸田氏という選択肢を失いたくないわけで、そのためには、少なくとも今回、次点に食い込んでほしいと思う。