「Go To」事業 新たな日常の中で軌道に
新型コロナウイルスの感染拡大で苦境に立つ観光業を支援する「Go To トラベル」事業から除外されていた東京都を10月1日から加えることなどを検討していた政府の分科会は、9月下旬にかけての感染状況を踏まえて最終判断することになった。すぐにゴーサインが出るのではないかとの見方もあったが、専門家の意見は慎重なものだった。
クラスターは発生せず
同事業は国内での宿泊費の割引やクーポンの発行などで旅行費用の半分を補助するというもので、7月にスタートしたが、新たな感染拡大期に入っていた東京都は対象から除外された。
東京発着の旅行が除外された影響は大きく、国土交通省によると、開始から1カ月間で同キャンペーンの利用者は556万人にとどまった。東京都民が利用できなかっただけでなく、地方から東京以外の地域への観光も低迷が続いている。
東京の参加で、観光業の復活に弾みを付けたいところだ。社会経済活動と感染防止の両立がなされなければならない。東京都そして全国で感染は減少傾向とはいえ、昨日の東京の新たな感染者は187人で200人近い。市中感染の傾向など、感染状況をさらに見極める必要がある。何よりも、安心感があってこそキャンペーンも盛り上がるというものだ。
同キャンペーンに対しては、感染の拡大を助長するなど、批判的な見解も強かった。ただ、観光庁の先月18日の発表では、同キャンペーン対象で感染者が確認された宿泊施設は6件で、クラスターなどの例は報告されていない。
キャンペーンへの賛否の論があっただけに、受け入れ施設側には検温そのほか感染予防策の徹底が求められた。これまでのところ、予防策が奏功していると言えるだろう。
秋の行楽シーズンを控え、地方の観光業界は復活をかけて臨むだろう。新型コロナの感染拡大以降、自粛に自粛を重ねてきた国民の中に潜在する観光への需要には大きいものがあると思われる。これをうまく生かしていきたい。
お盆の首都圏からの帰省者に対する地方の人々の反応には、過剰なものがあった。強い警戒心を解くためにも、感染予防策を徹底し新たな日常の中での観光を軌道に乗せる必要がある。
観光業同様に大きく落ち込んでいる飲食業を支援する「Go To イート」キャンペーンも、今月中にもスタートする見込みで、参加する飲食店の募集が始まっている。同事業では、購入額の25%を上乗せした地域限定の食事券を発行する。
分科会の尾身茂会長は「感染がコントロールされている地域を基本とし、慎重に対応してほしい」と述べている。会食を通しての感染が少なくないことが分かっている以上、対策の徹底が求められるのは当然だろう。
安心できるサービスを
参加の条件として、間隔を空けた席の配置や換気の徹底、抜き打ちの調査への協力が挙げられている。新しい日常の中で客が安心できるサービスの提供が、観光、飲食業ともに復活への道となる。