芸能人の大麻逮捕 業界全体で撲滅に動け
また有名芸能人が違法薬物で逮捕された。俳優として数々の作品に出演していた伊勢谷友介容疑者(44)。大麻を常習的に乱用していたとみられており、芸能界に広がる薬物汚染の深刻さを示す事件だ。
捜査当局は入手経路を調べ、芸能界の薬物汚染に徹底的にメスを入れてほしい。また、これほど俳優やミュージシャンらの違法薬物事件が続くのであれば、個人の問題として片付けず、業界が乱用根絶へ積極的なアクションを起こすべきだ。
長期にわたる薬物乱用
伊勢谷容疑者の自宅からは、所持していた大麻(7・8㌘)とは別に、乾燥大麻とみられる物質が入った袋が四つ(計20・3㌘)押収されている。これは40回分の使用量に当たる。このほか、机の上には巻紙約500枚や厚紙で作った吸い口のようなものが置かれており、同容疑者が常習的に大麻を使用していたことを裏付けている。
近年、芸能人による違法薬物時件が頻発している。昨年3月、ミュージシャンで俳優のピエール瀧さん(53)がコカイン乱用で逮捕。同11月には、人気女優だった沢尻エリカさん(34)が合成麻薬MDMAを所持したとして逮捕された。2人は有罪判決を受けている。
今年2月には、歌手の槇原敬之さん(51)が覚せい剤や危険ドラッグを所持したとして逮捕され、懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けた。
これらの芸能人に共通するのは乱用が長期にわたっていたことだ。瀧さんは20代から薬物を乱用していたと指摘され、沢尻さんは軽度の大麻依存症と診断されていた。槇原さんは20年前にも薬物事件を起こしている。
伊勢谷容疑者は、奇行が目立つなどしたことから、業界ではかなり以前から乱用の疑惑が取りざたされていた。芸能人の薬物事件が起きるたびに「次に逮捕されるのは伊勢谷か」と名前が挙がっていたという。
こうした状況を芸能事務所が知らないはずはない。芸能人の薬物乱用は、業界の体質が厳しく問われなければならない問題である。また、テレビ局は薬物検査を番組出演の条件にするなど思い切った手を打つべきだ。
テレビ・映画などに登場する有名人の事件は、社会への影響が大きい。好奇心があおられ、薬物に手を染める若者が出る懸念があるのだ。そうでなくても、大麻乱用を軽く考える若者は増えている。
警察白書によると、大麻取締法違反で昨年検挙されたのは4321人で、過去最多を記録した。年齢別の比率では、20代以下が6割を占める。この割合は年々増加傾向にある。先月には、三重県内で知り合いの中学性2人に大麻を販売したとして瓦職人の少年(17)が逮捕された。
若者への防止教育充実を
背景にあるのはインターネット上に溢(あふ)れる間違った情報だ。「大麻は酒・たばこより依存性が低い」「海外では大麻が合法化されているから安全」などの情報が、若者の抵抗感を弱めているのだ。新型コロナウイルス禍で自宅でネット情報に接する時間が増えているのだから、若者への乱用防止教育はこれまで以上に充実させる必要がある。