まだまだ短い
政治評論家 髙橋利行
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の誰を好むかと問われると、日本人の多くが「信長」を選ぶという。短い人生を峻烈(しゅんれつ)に生き抜いた生き様が、日本人を引き付けて止(や)まないのだろう。
信長が好んで舞った幸若舞の「人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり 一度生を享け滅せぬもののあるべきか」も日本人の心情を体現しているのだろう。日本人の寿命がそう長くなかったこともあったに違いない。
だが、そろそろ「永きを以て尊しとせず」という発想も変え時に来ているのではないか。中国やロシア、EU(欧州連合)の指導者が驚くほど長い政権を維持していることを考えると、日本が「猫の目」のようにくるくると政権が代わるのでは到底太刀打ちできない。宰相・安倍晋三がやっと桂太郎を抜いたとしても、たかだか7年である。まだまだ短いと謂(い)わざるを得ない。