首相在職歴代最長、初志貫徹し憲法改正の実現を


 安倍晋三首相の通算在職日数が20日、2887日となり、20世紀初頭に3回政権を担った桂太郎を抜き、歴代最長となった。短命に終わった第1次政権の反省を踏まえ、2012年12月の再登板以降は経済最優先で足元を固めて国政選挙で連勝し、安定した政権運営を続けてきた。自民党総裁として残る任期は2年足らず。長期政権の緩みや驕(おご)りを戒め、令和の新しい国づくりに向けて、憲法改正の初志を貫徹し実現してもらいたい。

安保体制を格段に強化

 首相は既に最長政権に恥じない業績を上げている。わずか1年の第1次政権だけでも、敗戦後の占領期から続く教育基本法を改正し、防衛庁を省に昇格させ、施行から60年ぶりに憲法改正の手続きを定めた国民投票法を成立させた。第2次以降も、国家安全保障会議(NSC)発足、特定秘密保護法制定、集団的自衛権の限定的な行使容認の閣議決定に続く安全保障関連法制定などを通じ、安全保障体制は格段に強化された。

 だが、首相が掲げた「戦後レジームからの脱却」の中心となる憲法改正は衆参両院の憲法審査会の審議が停滞しており、「戦後日本外交の総決算」の核心となる北方領土問題の解決(日露平和条約締結)、北朝鮮の拉致問題解決(日朝国交正常化)は突破口も開けていない。経済面でもアベノミクスによるデフレ脱却は道半ばであり、自ら国難と呼んだ少子高齢化、人口減少問題についても抜本的な解決策を示せていない。自民党内には首相の総裁4選を望む声もあるが、まずは現在の任期の内に解決を目指すのが筋だろう。

 首相の長期安定政権に手を貸したのは野党の低迷だ。まず、3年3カ月続いた民主党政権に対する国民の失望感は大きい。さらに、政権を追われた後も捲土重来(けんどじゅうらい)を期して組織を整備し政策を研鑽(けんさん)するのでなく、選挙の度毎(たびごと)に目先の利益のために離合集散を繰り返し、ついには理念・政策が異なる(はずの)共産党の協力がなければ党勢を維持できなくなった。

 森友・加計学園問題や財務省の公文書改竄、防衛省の活動報告書隠蔽(いんぺい)などのマスコミが暴いたスキャンダルを追及しても、安倍政権に致命的な打撃を与えられないのは、野党が政権の受け皿になり得ていないためだ。野党は現在、「桜を見る会」で政権批判を強めているが、その点の猛省・改革がなければ無責任の誹りを免れないだろう。

 また、小選挙区制の導入によって自民党の派閥の力が弱まり、“党内野党”の活動が低下したことの影響も少なくない。それは、自民党が一糸乱れず政策を遂行するにはいいかもしれないが、「ポスト安倍」に不安を残す原因にもなっている。

令和の国づくりに全力を

 御代替わりの主要儀式を終えて、令和の新しい国づくりが本格的に始まる。その基本は憲法だ。既に制定後70年以上が過ぎ、日本の立場も被占領下、冷戦下の発展途上国、先進国、主要国と変わり、冷戦は終わった。安保環境も激変した。首相は政権の総仕上げとして憲法改正に全力を注ぐべきだ。野党も国会で審議を遅延させ、国民の(改憲)権利行使を妨げてはならない。