習氏、台湾侵略へ野心 「次の100年」に照準


中国共産党100年

中国軍拡、焦る米軍

 中国の習近平国家主席(共産党総書記)は1日、共産党創立100年の記念式典で「祖国統一が党の歴史的任務だ」と表明し、台湾統一への野心をあらわにした。平和統一の機運がしぼむ中、習氏は武力行使も辞さない構えだ。習氏が目指す「強国」はアジアの安全保障をますます厳しいものにしている。

 超え「毛に並ぶ実績」

1日、中国共産党創立100年記念式典が開催された北京の天安門広場に掲げられた毛沢東の肖像(EPA時事)

 共産党は今年、習氏の権威向上に努めてきた。党の歴史に関する本や展示は「建国の父」毛沢東に次いで習氏の業績に重点を置く。改革開放政策を進め「富国」の基礎をつくった鄧小平は扱いが小さくなり、江沢民・元国家主席らとひとくくりにされた。党史研究者は「鄧は過去の指導者にすぎない。毛は建国の指導者、習氏は現在と未来を担うから別格だ」と解説する。

 習氏は来年の党大会で異例の3期目(2022~27年)入りが確実視されている。1日の演説でも習氏は建国100年となる49年に「強国」を実現するという目標を強調した。今のところ習氏の実績は毛や鄧に比べれば乏しいが、台湾統一を実現すれば名実共に「歴史的指導者」になることができる。

 習氏は1985~02年に台湾と交流の深い福建省に勤務しており、台湾への思い入れは強い。19年の演説では台湾統一に向けた「武力行使」の可能性にも言及した。北京の知識人は「台湾で独立志向が高まり、平和統一はもはや不可能。習氏は3期目以降に台湾に侵攻するつもりだ」とみる。

 米軍「敗北」の予想

 

 米国内でも、中国による台湾の武力統一が現実味を帯びてきたとの認識が広がっている。米国が中東で対テロ戦争に力を入れていた過去20年、中国は米軍の地域介入を阻止するためにミサイル戦力を増強。初の強襲揚陸艦「075型」を建造するなど着実に台湾侵攻の準備を整えてきた。

 軍事バランスは中国に有利に傾き始め、台湾海峡での米軍の抑止力が「過去最低水準」に落ち込んだとみる向きは多い。米軍筋によれば、台湾有事を想定した紛争シミュレーションでは、米軍が中国に敗北するケースが増えている。

 こうした状況を踏まえ、アジアでの前方展開戦力を強化し、台湾との連携を深めるべきだという主張が勢いを増している。これに対し、米シンクタンク「ケイトー研究所」のテッド・ゲイレン・カーペンター研究員は「台湾防衛に多くの犠牲を払う価値があるのかを感情論に支配されず、慎重に検討する必要がある」と訴える。

 米国は深刻なジレンマを抱えている。台湾有事で軍事介入しなければ、日本など同盟国の信頼を失い、各国との関係も根本的に揺らぎかねない。介入して敗れた場合は「衰退ぶり」をさらすことになる。

 ただ、中国軍は1979年の中越戦争後、本格的な対外戦争を経験しておらず、「経験豊富な米軍にまだ勝てない」(中国の国際問題専門家)と指摘される。それでも、後手に回った米側には焦りの色が見える。インド太平洋軍のデービッドソン前司令官は、中国が26年までに西太平洋における軍事力で米国を上回り、「6年以内」に台湾を攻撃する恐れがあると警告している。(北京、ワシントン時事)