神奈川逃走、危機意識の低さによる大失態


 神奈川県で窃盗などの罪で実刑判決が確定した無職の男が、収容に応じず逃走する事件が発生した。

 男は公務執行妨害容疑で逮捕されたが、逃走を許したことは検察と警察の大失態だ。再発防止を徹底する必要がある。

 保釈される被告が増加

 男は今年2月に懲役3年8月の実刑が確定。横浜地検職員と県警厚木署員の計7人が今月、愛川町の男の自宅を訪問し、収容に応じるよう求めたが、男は刃物を振り回し、小型車で逃走した。

 耳を疑うのは、7人が収容の際にいずれも防刃チョッキを着ておらず、厚木署員も拳銃を所持していなかったことだ。実刑が確定した被告が、反抗したり、逃走したりすることを全く想定していなかったとすれば、その危機意識の低さにあきれるほかはない。検察と警察は収容時の装備を強化すべきだ。

 逃走した後の対応もお粗末だった。横浜地検が周辺自治体などに逃走を公表したのは、逃走の約3時間半後。県警が緊急配備を敷いたのは、4時間以上が経過した後だった。これでは早急に逮捕することはできないだろう。

 愛川町の小野沢豊町長が「事件発生は子供たちの下校時刻に重なっていた。(情報の遅れに)町民を守る町長として強い憤りを感じる」と再発防止を求めたのは当然だ。男は結局、横須賀市の知人宅で逮捕されたが、事件は地元住民を大きな不安に陥れた。検察と警察は遅れについて徹底検証し、教訓をくみ取らなければならない。

 最近は保釈が認められやすい傾向がある。最高裁によると、2017年に一審判決前に全国の地裁で保釈が認められた被告は1万4552人で、10年前の1・5倍に達した。

 09年に導入された裁判員制度の下で被告と弁護人が入念に公判の準備をする必要性が高まったためだ。しかし、昨年末時点で26人が実刑確定後も収容に応じず、刑の執行を免れている。

 さらに、保釈中に別の事件で起訴された被告は17年に246人で、10年前の3倍近くとなっている。殺人や強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪を引き起こしたケースもあり、保釈の増加が望ましいとは決して言えない。

 今回逃走した男も、過去に傷害致死や強姦致傷などの罪で実刑判決を受けていた。検察側は保釈に反対していたという。このまま男が逃亡していれば犯罪を繰り返す可能性もあった。裁判所は保釈の基準をもっと厳しくする必要がある。

 男が実刑確定後、4カ月以上も収容されていなかったことも理解に苦しむ。刑が決まったのであれば、すぐに刑務所に入れるべきではないのか。背景には東京高検と横浜地検との連携不足があったようだが、長期間放置しておけば逃走や再犯などのリスクが高まることは分かり切った話だ。

 法の不備を改善せよ

 刑法の「逃走罪」は刑務所などから逃げた場合に適用され、保釈後の実刑確定者は対象にならない。再発防止に向け、出頭しない場合の刑罰を新たに設けるなど法の不備を改善することも不可欠だ。